日々の生活の中で値上げが相次いでいます。電気代もその例外ではありません。電気代の値上がりは家庭の問題だけでなく、企業にも影響を与え、様々な職種に打撃を与えました。去年の夏、新潟県にある遊園地「サントピアワールド」様がTwitterで「経費が年間1700万円もあがる」という内容をあげ、話題になりました。サントピアワールド様の電気料金が年間1820万円から3580万円になるという見積りでした。実に2倍近い値上げになることに、驚いたかたも多いのではないでしょうか。
【NHK WEB NEWS】節電の夏 相次ぐ電気代値上げに各地で悲鳴
電気代の値上がりは製造業も例外ではありません。この記事では、なぜ電気代が上がっているのかについて解説し、製造業にできる電気代低減の取り組みについて考えます。
目次
電気代の高騰について
1)電気代の高騰と製品原価
電気代の高騰は、企業にとって死活問題です。特に、電力を多く必要とする製造業においては、電気代の高騰が工場の運用コストに直接かかわってきます。
以前であれば、多少電気代がかかったとしても、品質が高く単価の高い製品を作れば十分採算が合っていました。しかし、近年では顧客のニーズが高度化しており、より付加価値の高い製品を、より低コストで製造することが求められています。
つまり、「コストをかけずにより付加価値の高い生産」を行うことが今まで以上に求められています。電気代は上がりつつけているため、電気代の製品原価に占める割合は近年急速に高くなってきています。
2)電気代高騰の原因
電気代高騰の原因は何でしょうか?
様々な理由が考えられますが、おおむね以下の4つの理由が挙げられます。
①脱原発の動き
東日本大震災の時の原発事故の影響で、多くの原子力発電所が運転を停止しています。このため、発電のためのエネルギーミックスに影響がでており、現在火力発電が多く用いられています。火力発電にかかるコスト増により、電気代アップに繋がっています。
②円安
火力発電を活用するには石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料が必要になります。日本には化石燃料があまりないため、輸入に頼らざるを得ません。円安が進んでいるなか、化石燃料を安価で輸入するのは極めて難しく、燃料の確保にかかるコストが電気代の高騰に繋がっています。
③ウクライナ戦争
ロシアのウクライナ侵攻によって経済制裁が行われ、報復措置としてロシア産の化石燃料のエネルギー供給が少なくなっています。そして、エネルギーの不足から市場原理が働き、価格がさらに上昇するという悪循環に陥っているのです。
④脱炭素の動き
近年、再生可能エネルギーを普及させることで極力、化石燃料を使わないというのが世界的なトレンドです。このため燃料の市場価格を安定させるために、化石燃料の産出国の燃料の生産は減産傾向になっています。これも燃料価格を上げる要因の一つで、電気代高騰を加速させています。
電気代高騰の原因として円安をあげました。弊社の他の記事でも円安問題についてとりあげておりますので、ぜひご参照ください。
>>弊社ブログ【2023年最新】コロナを乗り越えた製造業に起こる「円安」問題と対応策を解説
3)電気代高騰はいつまで続く?
以上が電気代高騰の主な理由ですが、この電気代高騰はいつまで続くのでしょうか?
上記の理由が解消すれば高騰は改善するはずですが、現実にはそんなに甘くありません。
「脱原発の動き」や「ウクライナ戦争」、「産油国の減産」の各問題は、政治的な問題が絡んでいます。そのため先が見通せない状況が続いており、結論がいまだ見えません。
そのため、東京電力管内では今後10年間は電気代が下がらないと考えられており、他の電力管内でも同様の傾向です。
製造業としては、身近なことから・できることから電気代の節減に取り組むしか手がありません。
企業として出来る対策
工場の電気代を節約するためには、以下のような方法があります。2つの手順で対策を打つことで電気代高騰に対する対策がうてます。
手順1…製品一個当たりの電気代を算出
手順2…製品一個当たりの電気代に対して具体的な対策をとる
以下で詳しく解説していきます。
手順1)製品一個当たりの電気代を算出
具体的な対策に入る前にまず、製品一個当たりの電気代を算出します。製品一個当たりの電気代を算出することで、省エネポテンシャルの把握できます。
省エネルギー効果の高い製品・省エネ改善の必要がある製品を特定することができます。これにより、効果的な節電策の立案が可能になります。
パフォーマンス評価
製品一個当たりの電気代を比較することで、製品の生産効率や省エネ性能を評価することができます。電気代が高い製品は、生産プロセスの見直しや技術の改善が必要かもしれません。
費用削減の目標設定
製品一個当たりの電気代を算出することによって、目標とする電気代の節約率を設定することができます。節約目標を明確にすることで、具体的な取り組みや改善プロジェクトを計画しやすくなります。
製品一個当たりの電気代を算出するためには、工場の電気使用量と製品の生産数とを紐づける必要があります。電力メーターや生産データを活用し、適切な方法で計測・集計することが重要です。
副次的な効果として、電力データや生産データを収集・活用することで、これらのデータを電気代削減以外の生産コスト削減に役立てることができます。
手順2)電気代算出後の具体的な対策
つぎに、取集したデータを分析して対象となる設備やラインに対して、必要に応じて以下の対策を講じます。
エネルギーマネジメントの導入
エネルギーマネジメントシステムを導入することで、電力の使用状況をモニタリングし、無駄な使用を特定することができます。設備やプロセスの改善点を把握し、効果的な節電策を実施することができます。
定期的な機械のメンテナンス
機械や設備の定期的なメンテナンスを行うことで、効率の低下や故障を防ぐことができます。正常な状態で稼働することで、無駄な電力消費を抑えることができます。
メンテナンスは、正常な状態での稼働を維持するために重要です。劣化や故障を防ぐことで、電力の無駄な使用を減らすことができます。メンテナンスには費用がかかる場合もありますが、予防的なメンテナンスは故障による停止時間や修理費用を削減する効果もあります。
エネルギー効率の良い設備への置き換え
電力消費の大部分は機械や設備によるものです。効率の低い機械や設備を効率の高いものに置き換えることで、電力の使用量を減らすことができます。
照明の見直し
夜間は一部の施設やエリアの照明を最小限にすることで、電気使用量を削減することができます。センサーを使用して、必要な場所でのみ照明が点灯するように調整すると効果的です。
また、高効率のLED照明への切り替えは、比較的低コストで行える節電策です。LED照明は消費電力が低く、寿命も長いため、照明設備をLEDに置き換えることで電気代の削減が期待できます。
機器のオン/オフ管理
使用していない機器や設備はオフにしましょう。タイマーやセンサーを使用して、必要な時間帯にのみ機器を稼働させることも考慮してください。
施設の断熱
施設内の断熱を向上させることで、冷暖房の効率を向上させることができます。断熱材の追加や窓の断熱改修などを行い、エネルギーのロスを減らすことができます。断熱材の追加や窓の断熱改修などは、比較的低コストで実施できる改善策です。
冷房や冷却の最適化
夜間は気温が下がるため、冷房や冷却装置の使用を最適化することができます。また、価格の安い夜間電力を利用して冷房をおこない、建物や機械の熱を放散することで、昼間の冷房負荷を軽減することができます。
スタッフの意識向上のための教育
スタッフに対して省エネの重要性を教育し、意識を向上させることも重要です。電力の節約に貢献する行動や習慣を身につけることで、組織全体での電力消費の削減につながります。例えば、機器のオン/オフ管理や節電習慣の醸成など、従業員の積極的な参加によって節電効果を高めることができます。
機器の稼働時間のシフト
電力供給料金が安い夜間に、機械や設備の稼働時間をシフトすることで、電気代を削減できます。例えば、製造ラインや機械のメンテナンスを夜間に実施することで、昼間のピーク電力時に比べて電気料金を節約することができます。
再生可能エネルギーの導入
太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を検討してみてください。自家発電による電力供給や、太陽光パネルの設置による電力の一部供給などが可能です。
蓄電池の活用
夜間に余剰電力を蓄えることができる蓄電池システムを導入することで、昼間のピーク時に蓄えた電力を使用することができます。これにより、昼間の高い電力料金を回避し、電気代の節約につながります。
まとめ
以上、製造業の電気代低減のための取り組みを見てきました。冒頭でも述べたように近年の電気代の高騰は家計を圧迫しますが、製造業にとっては、なお深刻です。しかし「困った・・・困った・・・」ばかりも言っていられません。できるところから始めていきましょう。
電気代節約のための活動は、生産ライン全体の効率化にもつながり、電気代だけでなく様々な経費の削減につながる可能性があります。
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【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
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