まず、「ナフサ不足」と聞いても、直接使っていない企業にとっては実感が湧きにくいかもしれません。
しかし実際には、ナフサは多くの製造業を支える“基礎原料”です。
ナフサとは、原油から精製される石油化学原料の一つで、以下のような製品に広く使われています。
■ナフサが関係する主な業界
プラスチック成形
塗装・コーティング
印刷・パッケージ
接着剤
電子部品材料
化学製品全般
つまり、直接ナフサを扱っていなくても、多くの製造業が間接的に依存しているということです。
例えば、
包装材が値上がりする、インキ不足、樹脂部品の納期が伸びる、塗料コストが急増する…等々
こうした形で、あらゆる現場に影響が波及します。
「うちは関係ない」と思っていた企業ほど、後から大きな影響を受ける可能性があります。
目次
現場で起きている“静かな異変”

現在、ニュースの報道だけを見ればそれほど混乱しているようには見えないかもしれません。
ですが、現場ではすでに異変が始まっています。
製造業の現場からは、こんな声が増えています。
「材料がいつ入るかわからない」
以前なら当たり前に届いていた材料が、急に納期未定になる。
これは今、多くの業界で起きています。
特に塗装・印刷関連では、
・インキ不足
・シンナー価格高騰
・樹脂材料の供給不安
・突然の出荷制限
などが顕著です。
実際、 Calbeeでも、原材料や包材などの供給問題によって、一部商品のパッケージ変更が話題になりました。
厄介なのは、「発注すれば買える」という状況ではなくなっていることです。
価格以前に、“そもそも手に入らない”というケースが増えています。
もう一つ深刻なのが、価格変動の激しさです。
月単位どころか、数週間で仕入れ価格が変わることも珍しくありません。
その結果、見積有効期限を短くしたり、利益計算が難しくなるなどといった問題が発生しています。
製造業にとって、“原価が読めない”状態は非常に危険です。
利益率が高いように見えても、納品時には赤字になっている。
そんなケースも現実に起き始めています。
ナフサ不足が引き起こす今後のシナリオ

今後、ナフサ不足による影響は大きく3段階で進む可能性があります。
① 調達難
まず起きるのが、材料の確保競争です。
「どこから買うか」ではなく、
「そもそも確保できるか」が重要になります。
これまでのように価格比較だけで仕入先を選ぶ時代ではなくなりつつあります。
② 価格高騰
供給が不安定になると、当然価格は上昇します。
ここで怖いのは、一度上がった価格が簡単には戻らないことです。
特に石油化学関連は、物流費・エネルギー費・為替など複数の要因が重なるため、長期的な高止まりリスクがあります。
③ 価格転嫁
最後に問題になるのが、“値上げできる企業”と“できない企業”の差です。
実際、製造業で起こりうる二極化現象をまとめるとこんな感じです。
生き残る企業
・適切に価格転嫁できる
・取引先と交渉できる
・付加価値を説明できる
・資金体力がある
厳しくなる企業
・値上げ交渉ができない
・利益を削って耐える
・キャッシュ不足に陥る
・最終的に撤退する
つまりナフサ不足は、“原材料問題”ではなく“経営力の差”が出る局面とも言えます。
製造業の経営者が今すぐやるべき3つの対策

では、この状況の中で企業は何をすべきなのでしょうか。
結論から言えば、重要なのは次の3つだと考えています。
① 資金調達を最優先する
まず最優先は、資金確保です。
原材料価格が上がるということは、それだけ運転資金が必要になるということです。
例えば、以前100万円で仕入れていた材料が130万円になるだけでも、キャッシュ負担は大きく変わります。
さらに、
在庫確保
前払い条件
まとめ買い
などが増えれば、資金繰りへの影響は一気に大きくなります。
だからこそ重要なのが、“困ってから借りる”ではなく、“今のうちに融資枠を確保する”ことです。
資金余力がある企業ほど、供給不安時に強くなります。
② 調達戦略を見直す
これからの時代は、「最安値調達」だけでは危険です。
必要なのは、“止まらない調達”への発想転換です。
具体的には、
複数サプライヤー化
海外ルートの検討
長期契約
地域分散
在庫基準の見直し
などが重要になります。
調達先を一社依存している企業ほど、リスクは大きくなります。
「安い」よりも「安定して入る」が、今後のキーワードになるでしょう。
③ 代替材料・仕様変更を検討する
完全代替は難しくても、一部置き換えだけでもリスクは下げられます。
例えば、
使用量を減らす
別素材へ変更する
製品仕様を見直す
工程改善を行う
といった対応です。
実際、早い企業ほど“原材料前提”を見直し始めています。
今後は、「今まで通り作る」こと自体がリスクになる可能性があります。
まとめ|ナフサ不足は“経営問題”として向き合う時代へ

ナフサ不足は、単なる資材価格の話ではありません。
その本質は、
・サプライチェーンの崩れ
・利益構造の変化
・企業格差の拡大
という、製造業全体の経営環境変化にあります。
そして今後は、“後手対応”の企業ほど苦しくなる可能性があります。
だからこそ必要なのは、今このタイミングで先手を打つことです。
□ 資金を確保する
□ 調達を見直す
□ 代替を進める
この3つを実行できる企業だけが、これからの不安定な時代を乗り越えていけるでしょう。
ナフサ不足は、まだ「静かな問題」に見えるかもしれません。
しかし現場では、すでに変化は始まっています。
その変化に早く気づき、動けるかどうか。
今、製造業の経営者に求められているのはそこなのかもしれません。