最近、製造業の現場でよく聞くようになった言葉があります。
「また材料が上がるらしい」
「今まで通りに入ってこない」
「納期が読めない」
これまでも原材料価格の上昇は何度もありましたが、今回の“ナフサショック”はこれまでとは少し性質が違います。
単純な値上げだけではなく、「材料そのものが不安定になる」という問題が同時に起きているからです。
特に塗装・樹脂・印刷・接着剤など、石油化学製品を扱う業界では、すでに現場レベルで影響が出始めています。
「まだ大丈夫」と感じていても、実際にはじわじわとサプライチェーン全体に影響が広がっています。
今回は、そんなナフサショックについて、製造業の現場目線で整理していきます。
目次
そもそもナフサとは? “材料の材料”と呼ばれる理由
ナフサという言葉、最近はニュースなどで耳にするようになりましたが、そもそもは馴染のない言葉だったかもしれません。
ですが、製造業にとっては非常に重要な存在です。
ナフサとは、原油を精製する過程で得られる軽質油の一種で、石油化学製品の基礎原料になります。簡単に言えば、「いろいろな材料の元になる材料」です。
例えば、
プラスチック
塗料
シンナー
印刷インキ
接着剤
合成ゴム
こうした製品の多くは、ナフサを起点として作られています。
さらにナフサは、エチレンやプロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)といった基礎化学品へ加工され、そこから樹脂や化学材料へ変わっていきます。
つまり、自動車、家電、包装材、建材など、最終製品は違っていても、その“入口”にはナフサがあるということです。
普段は意識されにくい存在ですが、実はナフサは、製造業全体を下から支えている“見えないインフラ”のようなものなのです。
今、現場で起きている「ナフサショック」
今回の問題は、「材料が高い」で終わる話ではありません。
もっと厄介なのは、“欲しい時に入ってこない”ことです。
背景には、
中東情勢の不安定化
ホルムズ海峡リスク
原油価格の上昇
世界的な物流混乱
などがあり、ナフサの供給そのものが不安定になっています。
実際、現場ではすでに、
塗料の納期遅延
印刷インキ不足
樹脂材料の入荷不安
接着剤の値上げ
といった影響が出始めています。
特に塗装関連では、「材料がないから作業が止まる」という声も珍しくなくなってきました。
製造業は、材料が1つ欠けるだけでもラインが止まります。逆に言えば、たった1つの材料不足が、納期遅延や生産調整につながるということです。
しかも、その影響は自社だけでは終わりません。
部品メーカーが止まれば、その先の組立メーカーも止まり、最終的にはサプライチェーン全体へ波及していきます。
今回のナフサショックは、単なる価格問題ではなく、“製造業の流れそのもの”を不安定にする原材料危機だと言えるでしょう。
なぜ今後も厳しいのか

正直に言えば、今後もしばらくは楽観しにくい状況です。
理由はシンプルで、日本はナフサを海外に大きく依存しているからです。
「別の国から買えばいいのでは?」と思うかもしれません。確かに代替調達は可能です。しかし、そこには別の問題があります。
調達価格が高い
輸送コストが増える
為替の影響を受ける
納期が長くなる
つまり、「買えるけれど高い」という状態になりやすいのです。
その結果、
原材料価格の上昇
↓
利益率の悪化
↓
中小企業の資金負担増
↓
価格転嫁の難航
といった流れは、今後さらに強くなる可能性があります。
特に厳しいのは、価格転嫁しにくい会社です。
原材料だけが上がり、販売価格を変えられない状態が続けば、利益はどんどん削られていきます。
製造業が今すぐ考えるべきこと

では、この状況の中で何をすべきなのでしょうか。
大事なのは、「様子を見る」ではなく、“止まらない準備”を進めることです。
① まずは資金を確保する
最優先は、やはり資金です。
原材料価格が上がれば、同じ量を仕入れるだけでも必要なお金は増えていきます。
そのため、
銀行融資枠の確保
手元資金の厚み
在庫増加に耐えられる体制
を早めに整えておく必要があります。
不安定な時代ほど、「現金を持っている会社」が強い。これは今後さらに重要になるでしょう。
② 調達先を分散する
もう一つ重要なのが、“1社依存”を減らすことです。
バイオ素材
リサイクル樹脂
他地域からの調達
国内外サプライヤーの分散
など、選択肢を増やしておくことが重要になります。
ただし、ここで大切なのは「いざ不足してから探す」のでは遅いということです。
実際には、
品質確認
試験
承認
工程調整
など、多くの時間が必要になります。
だからこそ、“使える代替案”を事前に持っている企業が強いのです。
まとめ|ナフサショックは、これからの経営課題

ナフサショックは、一時的な値上げではありません。
製造業の土台そのものに関わる“構造的な原材料危機”です。
しかも、この問題は一部業界だけで終わりません。
材料価格、物流、エネルギー、人件費──あらゆるコストが上がる中で、製造業はこれまで以上に「経営判断の速さ」が求められる時代に入っています。
だからこそ今必要なのは、
資金を確保する
調達先を分散する
価格転嫁を進める
付加価値を高める
こうした“備え”を、早い段階から進めておくことです。
環境の変化は止められません。
しかし、備えることはできます。
そして最後に残るのは、変化が起きてから動いた会社ではなく、変化を前提に準備していた会社なのかもしれません。

中小製造業の経営者でしか知りえないリアルな情報を発信
【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
【講演実績】
おかやまテクノロジー展(OTEX)2022 『仲間と共に歩むV字回復ストーリー』
日本金型工業会 『WEBマーケティングの力で新規開拓 ~顧客開拓に成功した事例~』
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