コロナにまったく動じなかった岡山の製造会社に聞く、具体的に行った3つのコト

製造業に従事している人の雇い止めが1万人を超える(9月24日・厚生労働省発表)など、新型コロナウイルスの影響は収束するどころかさらに拡大の傾向を見せ始めている。そんな中、このような状況にあっても昨年までとほとんど変わらない業績をキープしている企業が岡山にあった。その理由はどこにあったのか?

ライター 箕輪 健伸
御津電子株式会社 取締役 役員 人見 雄一
御津電子 取締役の人見雄一さん

御津電子はなぜ「大きな影響を受けなかった」?

 御津電子は、岡山県岡山市に本社を置く制御機器の開発・製造や金型製作、金属加工などを行う製造業だ。本社のほか、国内2カ所、中国に2カ所の工場をそれぞれ構えている。同社取締役の人見雄一さんは、新型コロナウイルスの影響について「大きな影響を受けなかった」と話す。

「業績は、新型コロナウイルスの感染拡大前と拡大後で、大きく変わっていません。会社全体として見ても工場ごとに見ても、大きな変化は見られません。こと業績という観点では、コロナの影響をほとんど受けていないというのが現状です」(人見さん)

 人見さんは、その理由について「常に新たな業界や顧客を開拓してきた成果では」と分析する。

「たとえば、制御機器と自動車の部品を作っている牛窓工場は、マスク製造機に欠かせない制御機器部品の注文が増加。さらに、新たに開拓した農業機具や建築関連のプラス分が、自動車部品のマイナス分を補っています。制御機器と建築部材、健康機器を作っている四国工場も同様で、制御機器や新たに開拓した医療部品のプラス分が健康機器部品のマイナス分を相殺しています」

 筆者が取材した製造業のなかで、現在、深刻な状況に陥っている会社の多くは取引先が1社もしくは数社、あるいは業界に特化した会社だ。人見さんは「たとえば、弊社が自動車部品の製造だけをしているメーカーであれば、今頃は危機的な状況だったはずです」と話す。

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1月中旬にはすでにコロナ対策を打っていた


本社、2つある工場ともに業績に大きな影響はなかった

 御津電子が新型コロナウイルスの影響をほぼ受けなかったのは、多様な業界と取引してきただけにとどまらないと筆者は考える。その理由のひとつに、同社の情報収集能力と実行力の高さがある。

「10年ほど前、新型インフルエンザが世界的に流行しましたが、日本は大きな影響を受けませんでした。しかし今回の新型コロナウイルスにおいては、現地からの情報や各国のニュースを見て、日本にも大きな影響を与えるはずだと、1月中旬から準備していました」(人見さん)

 1月中旬といえば、中国で新型コロナウイルスが確認されてはいるが、多くの日本人はどこかひとごとだったではないだろうか。

 SEC新宿駅前クリニックが1月28日~29日に行った調査によると、「勤務先で新型肺炎(新型コロナウイルス)について何かアナウンスや対策などの通達はありましたか?」という設問に、「あった」と回答した人はわずか2割にとどまっている。1月下旬の調査でこうなのだから、御津電子が対策に乗り出した1月中旬に、新型コロナウイルスの対策を講じた企業が日本中にどれだけあっただろうか。
「具体的に行ったことは3つあります。1つ目は従業員に毎日の検温と記録を徹底させたことです。その結果、新型コロナウイルスの罹患(りかん)者が出ていないことはもちろん、体調不良での欠勤者が減ったという副産物もありました。2つ目は、紙での記録からデジタル、クラウドに移行することで業務の汎用化(はんようか)を進めました。中小企業にありがちな『その人にしかできない仕事』を少なくするためです。3つ目に行ったのは、テレワーク・在宅ワークの活用です。テレワークを活用した結果、業務効率を大幅に良くなりました」(人見さん)

御津電子の情報収集能力の高さ、加えて効果的な施策をすぐに打ち出せる実行力の高さが端的に表れたケースだと筆者は感じた。また、だからこそ「50期連続で赤字計上はありません」(人見さん)という稀有な実績を残すことが可能なのだろう。

コロナ禍はチャンス、御津電子が今取り組んでいること


技術力の高さは御津電子の売りのひとつ

 人見さんは、コロナ禍に見舞われる現在の製造業市場を「チャンスだと捉えている」という。

「この機会に、人材獲得に力を入れています。コロナがなければ面接に来なかったであろう、優秀な人材を複数名採用できました。また、新規顧客の開拓もこれまで以上に積極的に行っています。具体的にはインターネットからの集客を狙ってSNSでの発信やホームページのPV数を上げる施策を打ちました。その効果もあってか、すでにインターネットを介しての新規企業からの受注が複数あります」(人見さん)


ブログでは、同社が取引している業界動向などの情報を発信している
(出典:御津電子 HP)

 人見さんはインターネットを顧客獲得のための手段として活用しているほか、自社の情報やノウハウ、製造業全体の今後の見通しなどを記載したブログを定期的に配信している。その理由を人見さんは、「業界全体の業績が回復することが、今後の日本にとって非常に重要だと考えているからです」と話す。

 新型コロナウイルスはたしかに、製造業にあまりに大きな影響を与えた。今現在、先の見通しがまったく立たず、苦しい思いをしている経営者は数多くいるだろう。しかし、そんなときだからこそ、平時にはできないような思い切った改革ができるのではないだろうか。

「今のこの状況をピンチと捉えるか、チャンスと捉えるかで未来は大きく変わるはずです」(人見さん)

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御津電子株式会社 取締役 役員 人見 雄一【この記事を書いたのは】
人見 雄一(ひとみ・ゆういち)
2016年御津電子株式会社に入社。取締役兼プラスチック事業_牛窓工場長を務める。前職の営業経験・ウェブ集客ノウハウを生かして、時代に合わせた工場運営を行う。
非常に厳しかった工場経営を、紆余曲折しながらも仲間と共にV字回復を実現。前向きで明るい仲間に囲まれて、厳しく楽しく成長できる職場を目指しています。
職歴:株式会社リクルートライフスタイル、株式会社ジュテック
学歴:岡山朝日高校・大阪学院大学国際学部卒 出身地:岡山市出身 生年月日:1981年生