高騰する電力価格と製造業:中小企業が直面する実際の影響


日々、多くのものが値上がりしています。電力価格も値上がりしているものの1つです。電力価格の高騰は家庭の負担になりますが、製造業者にとっても大きな負担になります。

 

電力価格の上昇は少しずつ落ち着いてきましたが、またいつ上昇し始めるかわかりません。電力価格が急に上昇しても対応できるように、特に中小製造企業は今のうちに対策を講じておかなければならないでしょう。

 

この記事では、昨今の電力価格の高騰の原因と中小製造企業への影響、中小製造企業が実施できる対策を紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。

電力価格の高騰の原因

昨今の電力価格の高騰の原因は、以下の3つです。

  • 燃料価格の高騰
  • 日本国内の電力供給量の不足
  • 再生可能エネルギー賦課金の上昇

それぞれ詳しく説明します。

燃料価格の高騰

1つ目は、燃料価格が高騰しているからです。ロシアウクライナ戦争によるロシア産資源の禁輸措置や新興国のエネルギー需要の高まりなどの要因が重なり、2022年に急激に燃料価格が上昇しました。

 

供給不足の燃料価格上昇に加え、長引く円安の影響により、日本ではさらに燃料価格が高騰しています。

 

また、地球温暖化抑制のために石油や石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスに需要が集中したことも、電力価格が高騰した要因の1つです。

日本国内の電力供給量の不足

2つ目は、日本国内の電力供給量が不足しているからです。

 

2010年の原発による発電電力量は約3,000億kWhでしたが、2019年には638億kWhまで減少しています。原子力発電の発電量が大きく減ったのは、2011年に東日本大震災があり、多くの原発が停止したからです。

 

原発の停止による電力不足を補うために、電力会社は火力発電所を2010年よりも稼働させています。火力発電には天然資源が必要ですが、天然資源の価格も上昇していることから国内の電力価格が高騰しているのです。

再生可能エネルギー賦課金の上昇

3つ目は、再生可能エネルギー賦課金が上昇しているからです。

 

再生可能エネルギー賦課金とは、電力会社が再生可能エネルギーの買取りに要した費用を電気料金に上乗せして、電気を使用する人たちで負担するものです。

 

2020年度は「1kWhあたり2.98円」だったのに対し、2021年度は「1kWhあたり3.36円」に上昇しています。

 

再生可能エネルギー賦課金が導入された当初は「1kWhあたり0.22円」だったので、すでに大幅な値上げがされています。

 

電力中央研究所によると、再生可能エネルギー賦課金は2030年度に「1kWhあたり3.5~4.1円」と今よりも値上がりするとの見通しです。

電力価格の今後の見通し

制御機器の開発・製造・検査

電力価格の今後の見通しは、あまり明るくありません。

 

再生可能エネルギー賦課金は、2030年までに今の倍ぐらいまで上昇する見込みです。

 

ロシアウクライナ戦争も長引いており、長引けば長引くほどロシアからの天然資源の輸出がなくなってしまうため、天然資源の供給不足による価格上昇が起きるかもしれません。

 

また、現在は「激変緩和措置」といわれる電気代への補助金が出されている状態です。予定では9月いっぱいで措置が終了予定でしたが、10月以降も延長すると岸田首相が発表しました。

 

いずれはこの「激変緩和措置」もなくなるため、電力価格の上昇は免れられないでしょう。

電力価格の高騰による製造業への影響

半導体

電力価格の高騰による製造業への影響は3つあります。

  • 利益の減少
  • 生産性の低下
  • 経営の悪化

どれも製造業にとって重要な問題になり得るので、しっかり読んでください。

利益の減少

1つ目の影響は、利益の減少です。

 

電力価格が上昇すると、月々の経費も上昇します。そのため、電力価格の上昇分、利益が減少することが予想されます。

 

電気価格の上昇分だけならまだいいですが、電力価格の原因となっている燃料価格の上昇は、原材料価格の上昇につながる可能性があります。

 

原材料価格も上昇してしまうと、電力価格の上昇以上に利益が減少するでしょう。

生産性の低下

2つ目の影響は、生産性の低下です。

 

電力価格が上昇すると製造業者は電力使用量を削減しようとします。電力使用量を大幅に削減してしまうと、生産ラインの稼働率が下がり、生産性が低下する可能性があります。

 

また、電気使用量を削減するために空調を利用しないようにすると、従業員の集中力が下がり、生産性の低下を引き起こすでしょう。

経営の悪化

3つ目の影響は、経営の悪化です。

 

電力価格が高騰すると原材料の価格が上昇したり、毎月の経費が増加したりします。

 

原材料の価格が上昇することで、これまでと同じ費用で生産しようとすると、実際の生産量が減少してしまいます。費用は増加するのに、売上高は減少してしまうので、赤字に転落する企業も出てくるでしょう。

中小製造企業ができる対策

御津電子株式会社 取締役 役員 人見 雄一

最後に、中小製造企業が電力価格高騰の影響を最小限にするためにできる対策を4つ紹介します。

  • 省エネ設備の導入
  • 生産ラインの効率化
  • 電力料金プランの見直し
  • 補助金の活用

それぞれ詳しく説明します。

省エネ設備の導入

1つ目は、省エネ設備の導入です。

 

製造業が利用する多くの電力は、機械を動かすのに利用されています。

 

古い機械であれば、多くの電力を利用してしまうため、電力価格の上昇の影響を大きく受けてしまいます。

 

しかし、省エネ設備を導入すれば、今までより電力を使用せず大きな成果を得ることが可能です。電力価格はこれからも上昇すると予想されているので、省エネ設備は早めに導入する方が賢い選択でしょう。

生産ラインの効率化

2つ目は、生産ラインの効率化です。

 

生産プロセスの見直しや自動化の導入によって、製造効率を向上させることができます。生産ラインの効率化ができれば、同じ量の製品をこれまでより少ない電力で生産することが可能です。

 

生産に必要な労力や時間を見直し、削減できるところがないかを確かめてみましょう。

電力料金プランの見直し

3つ目は、電力料金プランの見直しです。

 

電力の小売が全面自由化したため、今ではたくさんの電力会社がサービスを提供しています。

 

日本国内で電力価格の競争が起こっているため、現在利用している会社よりも安く電気を提供している会社もあるかもしれません。

 

電力プランを変更するのは手間に感じるかもしれませんが、工場での電力使用量が多い製造業者はプランを変えるだけで大幅な電力料金の削減ができる場合があるので検討してみてください。

補助金の活用

4つ目は、補助金の活用です。

 

エネルギー価格の高騰を受けて、中小企業向けに政府が支援を発表しています。

 

例えば、経済産業省は省エネルギー設備への更新を促進するための補助金として総額で1,625億円の予算を確保しています。

 

しかし、補助金の予算は決まっていたり審査があったりするため、必ずしも補助金を受け取れるかどうかはわかりません。

 

国が発表している補助金を受けられなくても、各自治体の補助金が受けられる場合があるので自社に合う補助金がないかを調べてみてください。

 

まとめ

この記事では、高騰する電力価格の原因と製造業への影響、中小製造企業ができる対策をわかりやすく紹介しました。

 

この記事のポイントを整理すると以下のようになります。

  • 電力価格の高騰の原因は「燃料価格の高騰」「日本国内の電力供給量の不足」「再生可能エネルギー賦課金の上昇」の3つです。
  • 電力価格の高騰により製造業は「利益の減少」「生産性の低下」「経営の悪化」の3つの影響を受ける可能性があります。
  • 中小製造企業ができる対策としては「省エネ設備の導入」「生産ラインの効率化」「電力料金プランの見直し」「補助金の活用」の4つがあります。

最後までご覧いただきありがとうございました。