出典:経済産業省資源エネルギー庁『燃料及び電力を取り巻く最近の動向について』(2022/5/17)(p18)
一昔前に呼ばれていた「ものづくり日本」の支柱が、今脅かされつつあります。
その理由は以下の3つ
ガス・原油などのエネルギーコストの高騰
上記グラフの通り、ガスや原油など、エネルギーの原材料が高騰の一途をたどっている。
先進国と生産国の駆け引きはいまだに続いており、今後の見通しも全く立っていない状況にある。
ウクライナ情勢は長期化の一途をたどる一方。その為、エネルギー関連のコストは下がっていく一途を見せない
20数年ぶりレベルの歴史的円安
円安は歴史的な数値を記録している。
円安にはメリットデメリットが存在するが、大きなデメリットとして輸入コストが高まる事が挙げられる。
ガスや原油価格の高騰に円安が加わり、日本のエネルギーコストはかつてない危機的状況にある。
昨今の円安がいつもと違う3つの理由を解説!!
過度な円安が中小製造業に与える影響
材料不足と高騰化
新型コロナのロックダウンとコンテナ不足に始まった材料不足は深刻な状況にある。
もはや半導体関連部品は2年待ちが当たり前の状況で、その深刻さは度合いを増している。
製造業においてコストの大半を占める、材料費とエネルギーコストの高騰は、多くのメーカーの経営を圧迫しています。
製造企業における売上総利益率(注)は、製造業平均で22.3%の中で、材料費、エネルギーのコスト高、円安による物価高のあおりをうけ、多くの製造業者は利益を出すことに限界を迎えています。
ここでは昨今のエネルギーコスト高や材料費の高騰・円安によって、現在の日本の製造業界がどのような危機に瀕しているか、中小企業の製造業の経営者の立場で解説します。
ぜひ最後までご覧いただければと思います。
製造業の経営を圧迫する理由
出典:総務省・経済産業省「工業統計調査」産業別統計表より資源エネルギー庁作成
企業物価指数が大きく上昇した鉄鋼、非鉄金属、石油・石炭製品といった産業は、生産の過程で多くのエネルギーを消費します。
2015年時点での国内生産額に占めるエネルギーの割合を見ると、鉄鋼業、化学分野、紙・パルプ分野、窯業・土石業の「素材系」4業種で特に高くなっています。
これらの業種では、製造プロセスで大量の電力や熱を使用したり、原料として石炭や石油を使ったりするためです。
つまり、国内生産額に占めるエネルギーコスト(生産にかかるエネルギー費用)の割合が高い産業ほど、価格変動の影響を大きく受けているのです。
出典:弊社の実際の数字(1事業部の実績)
上記グラフは弊社における実際の数値です。材料とエネルギーコストの合計は約30%と大きなウェイトを占めている。
その中で、新型コロナウィルス感染拡大による経済活動の低迷や、ウクライナ危機によるエネルギーコストの高騰、近年稀に見る円安の進行により、材料費は1.5〜3倍に跳ね上がっています。
また、エネルギーコストも以前の2倍以上に膨れ上がっており、製造原価を押し上げる要因となっています。
それは結果として、材料とエネルギーコストの合計は37%近くに上昇し、営業利益を大きく圧迫している。
製造原価が上がることで、結果的に経費が圧迫され、最終的には小売価格へ転嫁されるということが発生しています。
特に電力の値上げのニュースは後を絶たない状況で、現在も価格交渉が進んでいます。
電力単価が30円を超している中で、弊社でも太陽光の自家消費を本格的に検討している段階にあります。
関連ニュース
高圧および特別高圧の標準料金メニューの見直しについて
https://www.energia.co.jp/press/2022/14366.html
背景
このような日本経済の悪循環が始まった背景を整理していきます。
新型コロナウィルスの感染拡大による、ロックダウンとコンテナ不足
元々は新型コロナウィルスの感染拡大によって、各国の都市でロックダウンが実行されたことで経済が停滞してしまい、さらにはコンテナ不足で全世界の物流が滞ってしまったことで、製造業の要である材料コストが上がったことが皮切りでした。
PCやスマホの需要で半導体関連が爆発的に伸びた
一方で世界の市場に目を向けると、PCやスマホの需要は爆発的に伸び、半導体や材料不足が発現してしまったことでさらに材料高になり、各メーカーの経営を圧迫しています。
原油やガスなどのエネルギーコスト上昇
そんな環境下で、ウクライナ危機によるエネルギーコストの高騰が、製造業界を直撃して、さらにメーカーの経営を苦しいものにしています。
アメリカのインフレとFRBの利上げ
一方で、アメリカで起こっているインフレが世界経済に影響を及ぼしています。
FRBでは、そのインフレを止めるため、利上げを敢行することで、インフレを抑えようとしていますが、その分ドルの価値が相対的に高くなり、円を含む各国の通貨の価値が下がっています。
日本の中小企業は、このようなかなり苦しい状況に直面しているのが現状です。
更なる追い打ち、受注増
アメリカを中心とした好景気経済により、製造業関連の受注は増加しています。
しかし、材料不足やエネルギーコストの増加、円安が進行する中で、利益を出していくことは至難の業で、そもそも材料が不足している中で、ものづくりを確立していくことが困難な状況です。
そんな中で、メーカーの取れる方法は薄利多売でものを売るということでしょう。
また、製造原価が高くなり、営業利益が目減りすることも覚悟しておかなければならない事項となります。
参考ニュース
これからの見通し
今後の見通しとしては、製造業界において、さらなるエネルギーコストと材料費の高騰、円安の加速を懸念するべきでしょう。
特に円安は、2022年9月現在1ドル143円を記録しており、これは20数年ぶりの円安傾向と言われています。
日本の場合、アルミ、鉄、原油、銅、石炭などは輸入に頼っていることもあり、円安が進めば進むほど、製造原価が上がってしまい、営業利益が目減りすることは必死です。
日本の製造業界にとって、多大なるダメージを与えることが予想されます。
中小経営が行うべき事
このような厳しい状況下において、日本の中小企業が行うことは2つであると考えています。
設備投資
製造原価の大半を占める材料費とエネルギーコストの上昇は全く見えない状況にあります。
だからこそ、1円でも製造原価を下げるため、省エネ設備や省人化設備の設置こそ、今出来る最大の対策。
これからさらにエネルギー高と原料高になることが予想されます。
製造原価の圧縮こそ、今やらなければならない経営課題。
来るべき未来に備え、今は投資の時期であると考えています。
人材投資
今更と思われる方もいると思いますが、このような危機的な状況を乗り越えるためには、人材への投資が必要です。
特に、特殊技術を持ち合わせている人材や、ITシステム・DXやAIに精通している人材の採用と育成が重要になっていると考えています。
太陽光発電の自家消費
電力の単価が30円を超える状況では、エネルギー費の節約と環境保全の観点から、工場で太陽光発電を利用することを考慮する時期に来ています。
特に自家消費による電力供給は、電力費の削減に直結します。この機会に、工場での太陽光発電の導入を本格的に検討してみてはいかがでしょうか。
円安の影響で受注が増え、利益率は低いが利益は出しやすい環境にあります。
今出た利益を何に使っていくか?これは経営者に求められている最大の課題。
今は、設備と人材への投資こそ、最も重要であると考えています。
まとめ
ここまで、円安やエネルギーコスト高騰が起きている中での日本の製造業界の状況や、その背景などについて解説してきました。
この記事のポイントを整理すると以下の通りです。
・現在の世界経済状況によって、材料費は1.5〜3倍に、エネルギーコストは2倍以上に跳ね上がっている。
・今の世界経済になってしまった最初の原因は、新型コロナウィルスの感染拡大によって、 世界各国でロックダウンが実行されたこと、またコンテナ不足によって物流が滞ってしまったことなどがあげられる。
・今後の製造業界の見通しとしては、円安のさらなる加速や、ウクライナ危機などによって 材料費、エネルギーコストが高くなることが予想される。
・今中小企業が行うべきことは、設備投資と人材への投資に集約される。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
中小製造業の経営者でしか知りえないリアルな情報を発信
【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
【講演実績】
おかやまテクノロジー展(OTEX)2022 『仲間と共に歩むV字回復ストーリー』
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