2023年に問題になった半導体不足が落ち着き、製造業者が安定して工場運営できるようになりました。
しかし、現在は半導体ではなく、リード線が不足する危機に陥っています。
リード線は電源や電子部品などを接続するための電線であり、電子部品を扱う製造には欠かせないものです。
現在もリード線が不足していますが、2024年にはリード線の需要増加により、さらに不足すると考えられています。
この記事では、はじめにリード線不足の現状と課題を説明し、2024年にさらにリード線が不足する理由を解説します。
最後にリード線不足の今、製造業者ができる対策を紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読めば、リード線不足で製造業者がやるべき対策を理解でき、リード線が不足している中でも安定した自社製品の製造ができるようになるでしょう。
目次
リード線不足の現状と課題
製造業でリード線は欠かせない部品ですが、現在リード線が不足しています。
リード線が不足している現在、押さえておくべきポイントは2つです。
|
それぞれ詳しく説明します。
主要な原材料価格の上昇
リード線の主要原材料であるアルミや銅などの価格が上昇しています。
ウクライナ危機やイスラエルの内戦により世界情勢が不安定になったことや、石油価格が高騰したことが原因です。
アルミニウムは2020年1月に1トン当たり1,773.09ドルでしたが、2023年12月には2,182.43ドルと約23%上昇しています。
同様に銅も2020年1月に1トン当たり6,031.21ドルでしたが、2023年12月には8,399.94ドルと約39%上昇しています。
再生可能エネルギーの普及
脱炭素社会への移行に伴い、太陽光や風力など再生可能エネルギー関連施設の需要が増加しました。
日本原子力文化財団の記事によると、太陽光発電と風力発電の累積導入量は年々増加しています。
引用元:日本原子力文化財団
2010年と比較すると太陽光発電が約17.8倍、風力発電が約1.9倍の累積導入量となっています。
再生可能エネルギー関連施設には大量のリード線が必要であり、脱炭素社会への移行に伴う再生可能エネルギー施設の建設によってリード線が不足しているのです。
2024年にさらにリード線が不足する理由
現在も不足しているリード線ですが、2024年にさらにリード線が不足すると考えられています。
2024年にリード線が不足すると考えられる理由は3つです。
|
それぞれ詳しく説明します。
次々に新規プロジェクトが始まるから
2024年は次々に新規プロジェクトが始まります。
リード線に関連する主なプロジェクトは以下の3つです。
|
それぞれのプロジェクトの概要を解説します。
熊本に半導体工場新設
半導体の受託生産で世界最大手の台湾の会社「TSMC」がソニーグループと共同で熊本県菊陽町に新しい工場を建設すると発表しました。
また、半導体工場も熊本県内の建設を検討していると言われています。
九州フィナンシャルグループによると、2031年までに6兆8,000億円あまりの経済波及効果があると試算しています。
その一方、半導体関連産業で働く人材の確保や育成をどうしていくかといった課題への対応が求められているのです。
世界最大手の「TSMC」の日本の動きは製造業者であれば、今後も追うべき情報と言えます。
2025年の大阪万博
大阪万博は2025年4月13日から184日間、150を超える国や地域、国際機関が参加するイベントです。
2024年1月10日に海外の独自文化や技術を紹介する展示施設の工事が始まりました。
これから各国の工事が始まると考えられ、リード線の需要が増加すると考えられます。
福岡市の天神ビッグバン
「天神ビッグバン」とは、福岡県の天神エリアで2015年から始まっている大規模な再開発計画です。
2015年2月から2023年3月末の間で建築確認申請の数は63棟にのぼり、2023年3月末までに完了予定の工事が52棟です。
現在も毎日工事が進められており、ビル内に使う電線によりリード線の需要が高まることが予想できます。
電線とリード線の原材料は同じであり、新たなビルの建設には多くの電線が必要です。そのためリード線の原材料が減る可能性が考えられます。
自然災害がリード線の供給ラインに打撃を与えたから
世界中で起こるさまざまな自然災害がリード線の供給ラインに打撃を与え、リード線不足をさらに悪化させています。
能登半島地震もリード線への供給に影響を与える可能性が高いです。
今後も南海トラフ地震をはじめ、強烈な自然災害が日本を襲うことが考えられ、その度にリード線の供給ラインに打撃を与えると予想できます。
シリコン製品の需要が増加するから
2024年にシリコン製品の需要が増加すると考えられます。一見、シリコンとリード線には関係が無いように思えるかもしれません。
しかし、シリコンは電気自動車や太陽光発電施設にも用いられているのです。
シリコンは電気を通しにくい性質を持っており、電化製品や電気回路において絶縁材料として広く利用されています。
今の時代は身の回りに電化製品が多く、それらの中にシリコンとリード線が使われていることから、シリコンの需要が増加するとリード線の需要も増加すると考えられるのです。
製造業者が今できる対策
製造業者においてリード線不足は、危機的な状況です。
一刻も早く対策しなければ、リード線不足の影響を大きく受けてしまいます。
リード線不足の影響を大きく受けないために、製造業者ができる対策は2つです。
|
それぞれ詳しく説明します。
在庫管理の最適化
リード線の供給不足や需要過多から、リード線を安定的に獲得するのが難しくなると考えられます。
不安定なリード線の供給量に対応するために、在庫管理を見直し、柔軟な対応策を検討してください。
在庫のデータ管理を徹底し、常に一定のペースで自社製品を作れるように備えるのが理想です。
自社に必要な分だけを購入
これからもより深刻なリード線不足になるからといって、リード線を買い占めることはおすすめしません。
買い占めてしまうと自社製品は安定して製造できるようになりますが、製造業界には悪影響になる可能性があります。そのため、自社に必要な分だけ購入するようにしましょう。
買い占めなければならないほど、リード線が必要な事業者は代替素材を検討してください。
リード線の原材料であるアルミや銅に代わる素材を探し、アルミや銅の供給の安定化を図りましょう。
まとめ
この記事では、製造業の危機であるリード線不足の現状と製造業者が行うべき対策を解説しました。
この記事のポイントを整理すると以下のようになります。
|
半導体不足の時と同じように一定の時間が過ぎれば、需要と供給が安定し、リード線不足が解消されると考えられます。
製造業者は今できる対策を徹底し、製造業に関わる全員でこのリード線不足を乗り越えましょう!