2024年、製造業において様々な困難が待ち受けています。
原材料の高騰や半導体の需要増加、人手不足等これまでも問題視されていたものに加え、
物流の2024年問題やDX・GX化の加速等、新たな課題も発覚しました。
今回は起こりうる5つの課題とその対策をお伝えしていきます。
目次
2024年に起こりうる5つのこと
2024年に懸念すべきことは5つあります。
原材料価格の高騰のリスク
すでに様々な原材料の価格が上昇していますが、2024年はさらに価格が上昇する可能性があります。
例として、石油価格が上げられます。
日本は石油の約99.7%を輸入に頼り、その9割以上をサウジアラビアなどの中東地域が、次いでロシアが占めてます。
今後、ウクライナ侵攻や中東紛争などが激化すれば、価格はさらに急騰する可能性が高いでしょう。
石油はLPガス、船や自動車などの輸送用燃料、プラスチックや溶剤など、様々なものに使用されており、価格高騰は製造業にとって大きな痛手となりそうです。
その他部材に関しても、不足や需要増加による価格高騰に要注意です。
(引用元:日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|経済産業省)
半導体の需要増加のリスク
4年で回るシリコンサイクル。
これまでの需要増加への対策として新設された半導体工場の多くが2024年に稼働開始。加えて2024年中の需要落ち着きの予測が重なり、2024年は供給過多になるのではないかと言われています。
しかし、半導体製品の数は年々増加しており、実際これまでの需要統計を見てみると右肩上がりになっています。
仮に落ち着いたとしても一時的なものであり、またすぐに需要増加や不足が起こるかもしれません。
(引用元:データ集 第4章 第5節 21項|総務省)
人手不足のリスク
製造業において人手不足の問題が深刻になっています。
その原因として賃金の安さ、工場の立地、「きつい・汚い・臭い」といった3Kのイメージなどが挙げられます。
また、少子高齢化も大きな原因です。
総務省統計局によると、2023年8時点での日本の総人口は前年同月に比べ64万人減少しています。
そのうち75歳以上の人口は74万人増加、2024年1月時点での新成人の人口は6万人減となっています。
高度な技術を持った技術者が高齢化。加えて少子化により技術の継承者が不足しているのが現状です。
物流の2024年問題のリスク
働き方改革関連法により、2024年4月1日以降、自動車運転の業務に対し年間時間外労働の上限が960時間に制限されます。
これにより引き起こされる様々な問題が物流業界の「2024年問題」です。
トラックの稼働時間が減少し、運送会社側の売上や利益の減少。運賃の値上げ・物流コストの増加。
さらに、近年貨物自動車運転者の求人倍率は低下しているにも関わらず、労働時間が減少することで収入も減少し、少子高齢化も追い風となりトラックドライバー不足に拍車をかけるでしょう。
実際、これによりマイナスの影響があると考える製造業者は76.2%に達し、大きな打撃となりそうです。
(引用:「物流の2024年問題」約7割の企業でマイナス影響見込む 運賃の値上げやスケジュール見直しなどで対応|産経新聞)
これまで通りの輸送が難しくなるかもしれません。
製造業のDX・GX化
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、デジタルテクノロジーを使用して生産性の向上や、多様化する市場ニーズに柔軟に対応するプロセスを意味します。
DX化を進めることで自社の競争力を高め、デジタル社会でも勝ち残る力を付けようとしている企業が増加しています。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、多くの企業でリモートワークなどの働き方改革が進められましたが、新型コロナウイルスが落ち着きを取り戻したことで、リモートワークを減らし出社に戻す企業が増える一方、製造業のIT投資の推移は上昇しています。
IT投資の先は、リモートワークなどの働き方改革に伴う業務把握のデジタル化等から、ビジネスモデルの変革や業務の効率化に変化していることが分かります。
(引用:2023年版ものづくり白書 第1部 第3章 企業の投資動向 データ資料|経済産業省)
また、「GX(グリーントランスフォーメーション)」とは、エネルギー効率性を上げ、温室効果ガス削減など環境負担の低減を実現するプロセスを意味します。
カーボンニュートラルの一環として、工場の電力を太陽光発電で補う、梱包材をプラスチック以外の素材に変える・削減するなど、様々な企業が少しずつ動き始めています。
次の時代で生き残るためにも、DX化・GX化を進めていく必要がありそうですね。
対策
では、上記5つの課題への対策とは何でしょうか。
「原材料価格の高騰」「半導体の需要増加」への対策
原材料や半導体の需要増加・価格高騰への対策は以下2点です。
・購入
・在庫管理の最適化 |
順に解説します。
〇購入
原材料や半導体の価格高騰に対する今できる準備として、あらかじめ購入しておくことができます。
また、複数サプライヤーの活用を検討しておくことも吉でしょう。
これまでの統計や現在の価格、世界情勢など常に最新の情報を入手し、需要と供給や価格変動に見通しを付け、購入しておくことが重要になりそうです。
ただし買い占めは、在庫過多につながり、製造業のためにもならないため、おすすめしません。
〇在庫管理の最適化
在庫管理システムの導入や、自社で在庫管理表を作成など、自社に合った方法で在庫管理を行うことも大切です。
在庫は、過剰に抱えすぎれば保管場所や作業工数の増加に繋がり、不足すれば生産ラインのストップや販売機会の損失に繋がります。
自社のできる範囲で、適切な在庫管理を行いましょう。
「人手不足」への対策
人手不足への対策は下記2点が挙げられます。
・SEO対策
・人材教育 |
それぞれ説明します。
〇SEO対策
ホームページのSEO対策を進め、SNSなどで自社のブランド力を高めましょう。
2023年5月時点での各SNSのアクティブユーザーは、LINEが9,400万人、Youtubeが6,900万人、X(旧twitter)が4,500万人、Instagramが3,300万人。
SNSの普及に伴い購買モデルも、これまでとは変化しています。
興味を持つと検索し共有する。それがまた他ユーザーに興味持たせ検索し共有。宣伝し続けずとも、他ユーザーによって自動的に宣伝される。
何千万という上記アクティブユーザーの内一人にでも興味を持たせられれば、 さらにそれが共有され多くのユーザーの目に留まれば大きな宣伝となりそうです。
現代では求人に向けた自社の宣伝において、SEO対策も成功の鍵かもしれません。
併せて読んでおきたい記事→【月間3万PV超えの施策】製造業者がやるべきSEO対策を手順ごとに解説!
〇人材教育
入社後の人材教育も、重要です。
積極的に研修や講習を受講できる環境を整え、個人のスキルレベルを向上させましょう。
また、個人別に能力グラフを作成して、個人のスキルを見える化することも、効率の良い生産に繋がるでしょう。
併せて読んでおきたい記事→2023年 製造業の人手不足倒産を防ぐ、具体的な解決策を解説。
「物流の2024年問題」への対策
〇納品ロットの見直し
物流の2024年問題により、運賃が値上げする可能性が高いです。
納品ロットを見直し納品頻度を減らすことは、運送コストの削減になります。
また、トラックの稼働時間の減少、ドライバー不足により従来通りの運送が難しくなることが予想されます。
できる限りまとめて納品を行えば、作業工数や運送会社の負担を削減できそうですね。
「製造業のDX化・GX化」への対策
〇自社の現状を可視化
DX化に向けて、まずは自社の現状を十分に把握することが重要です。
課題や方針を可視化し、DXで解決すべき事かどうかを選別しましょう。
そして企業のDX化を進めていくためには精通した人材も必要となります。
採用や既存社員の育成を積極的に行うことで、人材を確保しましょう。
また、GX化を推進するにあたってもDX化は重要なポイントになります。
CO2排出量の算出やモニタリングにIoTを活用する等選択肢は多くありますが、まずはプラスチック梱包材の削減を検討することも「GX化」への第一歩になるでしょう。
「DX」と「GX」、それぞれの本質を理解することが大切ですね。
併せて読んでおきたい記事→製造業のDXが進まない理由は?DX化で気をつけるべきポイントは5つ
まとめ
今回の記事では、2024年に起こりうる5つの出来事とその対策をお伝えしました。
ポイントは以下の通りです。
〇起こりうる出来事
・原材料の価格高騰 ・半導体の需要増加 ・人手不足 ・物流業界の「2024年問題」 ・製造業のDX・GX化 〇対策 原材料の価格高騰・半導体の需要増加 ・購入 ・在庫管理の最適化 人手不足 ・SEO対策 ・人材教育 物流業界の「2024年問題」 ・納品ロットの見直し 製造業のDX・GX化 ・自社の現状の可視化 |
既に起こり始めているものを含め、今回発覚した新たな課題は製造業に大きな影響を及ぼします。
自社に合った早期の対策をし、皆さんでこの2024年の困難を乗り越えましょう!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
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