2023年の半導体不足が落ち着き、2024年は安定して工場運営ができると思っている事業者が多いのではないでしょうか。
実は、2024年は製造業者にとって2023年以上に厳しい状況になるかもしれません。
この記事では、2024年が製造業者にとって厳しい状況になる理由と、2025年に向けて今年やるべきことを解説します。
この記事を読めば、2024年にやるべきことが明確になり、今後も安定して自社製品の製造ができるようになるでしょう。
目次
製造業の現状
2024年、製造業は前例のない危機に瀕しています。
製造業が前例のない危機に瀕している理由は3つです。
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それぞれ詳しく説明します。
シリコンサイクルからの逸脱
製造業はシリコンサイクルからの逸脱を試みています。
シリコンは製造業には欠かせない材料であり、特に半導体を扱う製品には重要な材料です。
半導体業界の構造的な景気変動サイクルを示す「シリコンサイクル」は、約4年で不況と好況のサイクルを繰り返すと言われています。
このシリコンサイクルから逸脱できれば、製造業者はシリコンサイクルの不況と好況に左右されず、安定した工場運営ができるのです。
半導体バブルの崩壊による在庫過多
新型コロナウイルスの感染拡大や電気自動車への急速な方向転換、IT技術の発展によって発生した半導体バブルは、2023年に収束しました。
しかし、半導体バブルの時に備えていた半導体が多く工場に残っており、製造業者は在庫過多の状態になっています。
在庫過多の状態が続くと、保管スペースが多く必要になったり、管理費用が発生したりと製造業者はマイナスの影響を被ってしまいます。
さらに保管中に品質が劣化し、商品価値が低下することも考えられるため、一刻も早く製造業者は在庫を最適な状態に戻さなければなりません。
ダイハツの事件による業界全体への影響
昨年12月20日にダイハツ工業の車両認証試験の不正問題が発覚しました。
ダイハツの不正事件により、製造業に大きな不信感を抱く消費者が増えている可能性があります。
消費者が不信感を抱いている状態だと製品の購入が控えられ、売上を上げることが難しくなってしまうのです。
ダイハツの不正問題に関しては、現在も多くのニュースで取り上げられており、今後の動向に注目したほうがいいでしょう。
製造業に影響を与える各国の選挙
2024年、世界情勢と製造業はどのように関わるのでしょうか。
2024年は世界的な「選挙イヤー」と言われています。アメリカやロシア、台湾など各地で国の代表や議会を決める選挙が行われる予定です。
各国での選挙が製造業界に与える影響は大きく、各国の選挙に対して業界全体が慎重な姿勢をとるでしょう。
この記事では日本に関係の深い国の選挙を取り上げます。
1月:台湾総統選
台湾では1月13日から総統選挙が行われます。
大きな争点は、「台湾への圧力を強める中国との向き合い方」です。
台湾は日本と貿易関係にあり、台湾における日本の輸入シェアは中国に次いで2位となっています。
中国と密に交流を図る政党が勝った場合、中国からの輸入を増やす政策を打ち出せば、日本からの輸入が減るかもしれません。
台湾が日本から輸入している45.2%は機械類であるため、製造業者への影響は甚大なものになるでしょう。
3月:ロシア大統領選
3月にはロシア大統領選挙が行われます。有力な候補者がおらず、現段階ではプーチン大統領の再選が確実のようです。
プーチン大統領が続投となれば、ウクライナに対する軍事侵攻が継続すると考えられます。
ウクライナ戦争が続けば、エネルギー価格が上昇すると考えられるため、製造業者にとっては部品の輸入コストが高くなる可能性があります。
4月:韓国総選挙
韓国では4年に1度の総選挙が4月に行われる予定です。
韓国総選挙とは、韓国の国会の300議席を決める選挙です。韓国の国会議員の任期は4年で解散がないため、4月の選挙に勝った政党が国政の主導権を握ります。
現在の大統領であるユン・ソンニョル氏を支える少数与党が負けてしまうと、ユン大統領は残りの3年間、国政で主導権を握れなくなるかもしれません。
韓国の2020年の輸入シェアは日本が2位となっています。国政の主導権を握る政党が変われば、日本との貿易関係に影響があるかもしれません。
11月:アメリカ大統領選挙
11月にはアメリカで大統領選挙が行われます。現段階では、現職のバイデン大統領と前大統領のトランプ氏が争う、2020年と同じ形になると言われています。
トランプ大統領は、アメリカ内の産業を守るために、輸入品に10%の関税を上乗せすることを検討していると言われていました。
輸入品に10%の関税が上乗せされてしまうと、製品をアメリカに販売している事業者は製品が売れずに苦しい状況になってしまうでしょう。
アメリカは日本と関係が深い国であり、国のリーダーが変わるとなると影響も大きくなると考えられるので、特に注目したい選挙です。
2024年の製造業における課題
2024年の製造業における課題は、限られたリソースの中での投資と革新です。
2025年には半導体バブルが再び訪れることが予想されています。
半導体バブルが起こると、思うように自社製品を作れなくなると考えられます。
しかし、2025年に向けて、今から準備しておけば半導体バブルが起きても、問題なく自社製品を製造できるでしょう。
半導体バブルに備えて、限られたリソースをどこに投資するかが経営者の腕の見せ所です。
2025年に向けて製造業者が行うべきこと
2024年は困難な一年となりますが、これは2025年の製造業バブルへの準備期間と捉えることができます。
2025年の製造業バブルに向けて、2024年に特に製造業者が力を入れるべきことは以下の3つです。
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それぞれ詳しく説明します。
DXへの転換
製造業者はDXへの転換を進めることが大切です。工場管理をDXへ転換することで余計なコストを削減できます。
しかし、中小製造業者はあまりDXへの転換が上手くできていません。理由は、DXに割く時間や資金があまりないからだと考えられます。
半導体バブルが起きると時間的・金銭的余裕が今よりもなくなると考えられるので、今のうちにDXへの転換をして、無駄なコストの削減に取り組みましょう。
設備投資
2024年のうちにしっかり設備投資しておきましょう。なぜなら、2025年は半導体バブルにより、設備投資するほどの余裕がなくなると考えられるからです。
今から設備投資して、2025年に備えることで半導体バブルが起きても大きな影響を受けずに済むでしょう。
特に省電力設備への投資がオススメです。昨今は各地で起きている紛争の影響もあり、燃料代が上がっています。そのため、省電力設備を導入することで長い目で見ると得になる可能性が高いです。
人材確保と育成
人材確保と育成は欠かせません。半導体バブルが収束し、現在は製造業者が安定して工場運営できているでしょう。
余裕がある時に人材確保することで、半導体バブルの時に焦って自社に適していない人材を採用してしまうリスクが低くなります。
また、人材育成に力を入れることで、一人当たりの生産性が高まるため、忙しくなったときに役に立つに違いありません。
まとめ
この記事では、2024年に起こる製造業に関連した国内と海外のニュース、2024年の製造業における課題、2025年に向けて製造業者が行うべきことを紹介しました。
この記事のポイントを整理すると以下のようになります。
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2024年は2025年に向けた準備期間になることは間違いないでしょう。
今年、しっかり準備できれば、2025年も安定した工場運営ができると思います。
製造業に関わる者同士、頑張っていきましょう!
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【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
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