2026年 原油高騰が製造業に与える影響とその対策


こんにちは。
御津電子株式会社 代表取締役の人見雄一です。

最近、ニュースを見ていても感じる方が多いと思いますが、原油価格が急激に高騰しています。

実際、ここ最近の市場では、わずか1週間で20円近く価格が動くような状況も起きています。これは製造業にとって非常に大きな問題です。

世界情勢が不安定になると、まず影響を受けるのがエネルギー価格です。そしてその影響は、私たち製造業に直撃します。

今回は、原油高騰が製造業にどのような影響を与えるのか、そして経営者として今何を考えるべきかについて、私の考えを整理してみたいと思います。

世界情勢が価格を動かす

油田

今回の原油価格の上昇の背景には、世界情勢、とりわけ中東地域の緊張の高まりが大きく影響しています。
その中でも特に注目されているのが、イランをめぐる国際情勢の不安定化です。イランは世界有数の産油国であり、中東の政治や軍事の動きは、原油市場に非常に大きな影響を与えます。もしこの地域で紛争や対立が激化した場合、原油の生産や輸送が滞る可能性があるため、市場では「将来、原油が不足するかもしれない」という懸念が広がります。

その結果、実際に供給が減っていなくても、将来的な供給不安を見越して価格が上昇するという現象が起こるのです。

そもそも中東地域は、世界の原油供給の中心地ともいえる場所です。
サウジアラビアやアラブ首長国連邦、クウェート、イラクなど、世界でも有数の産油国が集中しており、世界中のエネルギー市場はこの地域の安定に大きく依存しています。そのため、中東で政治的緊張や軍事的衝突の可能性が高まると、世界のエネルギー市場はすぐに反応し、原油価格が大きく動くことがあります。つまり、原油価格は単なる資源価格ではなく、国際政治や安全保障の影響を強く受ける“地政学的な商品”でもあるのです。

そして、このような国際的なエネルギー市場の変化は、日本にとって決して遠い出来事ではありません。日本は石油や天然ガスなどのエネルギー資源をほとんど自国で産出できないため、エネルギーの多くを海外からの輸入に頼っています。
そのため、世界の原油価格が上昇すると、燃料費や電力コスト、輸送コストなどが上昇し、結果として製造業や物流、さらには私たちの日常生活にも幅広く影響が広がっていきます。

実際に、経済産業省が公表しているエネルギー政策の資料でも、日本のエネルギー供給構造の特徴として、海外依存度の高さが指摘されています。

出典:エネルギー白書(経済産業省)https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/

このエネルギー白書によると、日本は原油輸入の約9割を中東地域に依存しているとされています。つまり、日本のエネルギー供給は中東情勢の影響を非常に受けやすい構造になっているのです。中東地域の政治や安全保障の状況が不安定になればなるほど、日本が調達する原油の価格にも直接影響が及びます。

このように考えると、今回の原油価格の上昇は単なる市場の変動ではなく、世界情勢と日本経済が密接につながっていることを示す象徴的な出来事ともいえるでしょう。遠く離れた地域で起きている国際情勢の変化が、最終的には日本の企業活動や私たちの生活コストにも影響を与える——。

今回の原油高は、その現実を改めて私たちに示しているのです。

原油高は製造業すべてに影響する

原油価格が上昇すると、その影響はエネルギー業界だけにとどまらず、実にさまざまな産業へと広がっていきます。特に製造業においては、原油価格の変動が複数のコストに同時に影響するため、経営や製品価格にも大きな影響を与える重要な要因となります。

まず最もわかりやすい影響の一つが、材料価格の上昇です。原油はガソリンや灯油などの燃料としてだけではなく、化学製品やプラスチックなど多くの素材の原料としても使われています。そのため、原油価格が上昇すると、それを原料とするさまざまな製品の価格も連動して上がりやすくなります。

例えば、私たちのような製造業では、製品の部品としてプラスチック樹脂を多く使用しています。プラスチックの原料となるのは石油から作られるナフサという物質であり、原油価格が上がるとナフサ価格も上昇し、結果として樹脂価格が高くなるという構造になっています。
つまり、原油価格の上昇は、材料の仕入れ価格を直接押し上げる要因になるのです。

出典:石油化学産業の概要(石油化学工業協会)https://www.jpca.or.jp/

しかし、原油価格の影響は材料費だけにとどまりません。物流コストの上昇にも大きく関係しています。製造業では、原材料を工場に運ぶ段階から、完成した製品を顧客へ届けるまで、さまざまな輸送手段が使われています。トラックによる陸上輸送、船舶による海上輸送、さらには航空輸送など、どの輸送手段も燃料を必要としています。そのため、燃料価格が上昇すると輸送コストも上昇し、結果として物流費全体が高くなっていきます。

実際に国土交通省も、燃料価格の変動が物流コストに影響を与える重要な要因であることを指摘しています。

出典:物流政策の現状(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/

さらにもう一つ、製造業にとって大きな影響を受けるのが電気代の上昇です。工場では、機械設備の稼働や空調、品質管理などのために大量の電力を使用します。日本では火力発電が電力供給の大きな割合を占めており、その燃料として石油や天然ガスが使われています。そのため、原油価格が上昇すると発電コストも上がり、結果として電気料金の上昇につながる可能性があります。

このように原油価格の上昇は、

・材料費
・物流費
・電気代

という、製造業の主要なコスト要素すべてに影響を及ぼします。これらのコストが同時に上昇すると、企業の製造原価は大きく押し上げられることになります。
そして最終的には、そのコストの一部が製品価格へと反映される形で、市場へと波及していくことになります。

その影響は最終的に私たち生活者にも及びます。
製品価格やサービス価格が上昇することで、日常生活の中で感じる物価の上昇という形で表れてくるからです。

このように考えると、原油価格の問題は決して特定の業界だけの課題ではありません。エネルギー、物流、製造、そして私たちの生活までをつなぐ、社会全体に関わる重要なテーマであると言えるのです。

中小製造業が今できること

このように原油価格の上昇によって、材料費や物流費、電気代などさまざまなコストが上がる状況の中で、企業の経営者はどのような対策を取るべきなのでしょうか。
外部環境をすぐに変えることはできませんが、自社の経営体質を強くするために今できることはいくつもあります。
私は特に重要なポイントとして、大きく3つの取り組みがあると考えています。

① キャッシュを確保する

まず何よりも重要なのが、十分なキャッシュ(手元資金)を確保しておくことです。

物価が上昇する局面では、企業が日常的に支払うコストの多くが同時に上昇します。たとえば、

・材料の仕入れ価格
・外注加工費
・電気代や燃料費

といった費用が次々に上がっていく可能性があります。これらのコストが上昇すると、同じ量の仕事をするためにも、これまで以上の資金が必要になります。つまり、企業が事業を回していくための運転資金そのものが増えていくということです。

もしこの状況で手元資金が不足してしまうと、仕入れや外注費の支払いが厳しくなり、経営は一気に苦しくなります。
外部環境が不安定な時代ほど、資金に余裕を持っておくことは非常に重要な経営判断になります。

だからこそ私はよく次のようにお伝えしています。

「今借りずに、いつ借りるのか」

銀行からの融資を活用して資金を確保しておくことは、決して守りの姿勢ではなく、むしろ企業を安定的に成長させるための基本的なリスクマネジメントの一つだと考えています。

② 省エネ設備への投資

次に重要になるのが、省エネルギー設備への投資です。

エネルギー価格が上昇している今、電力や燃料の使用量を減らすことは、企業のコスト構造を改善するうえで非常に大きな意味を持ちます。たとえば工場設備の中でも、

・高効率の射出成形機
・インバータ制御設備
・LED照明
・高効率空調設備

といった省エネ型の設備は、従来の設備と比べて電力消費を大きく抑えることができます。
エネルギー価格が高い時代ほど、こうした設備の導入によるコスト削減効果は大きくなり、投資回収のスピードも早くなるという特徴があります。

また、こうした省エネ投資の重要性については、国も強く提言しています。

出典:省エネルギー政策(資源エネルギー庁)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/

これからの時代は、単に製品を作るだけではなく、いかにエネルギー効率の良い工場をつくるかが企業競争力を左右する重要なポイントになります。設備投資は単なるコストではなく、将来の利益を生み出すための重要な戦略投資と言えるでしょう。

③ AI・DXの推進

そして三つ目に挙げたいのが、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。

製造業におけるコストというと、多くの人は人件費を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、業務の非効率や情報の分断によって生じている生産性の低さが大きなコストになっているケースも少なくありません。

DXを進めることで、

・作業工程の自動化
・受発注業務の効率化
・在庫管理の最適化

など、これまで人の手で行っていた業務をデジタルの力で効率化することが可能になります。
その結果、業務のムダや手間が減り、少ない人数でもより多くの仕事を処理できる体制をつくることができるようになります。

人手不足が進むこれからの時代において、AIやDXの活用は単なるIT導入ではなく、企業の持続的な成長を支える重要な経営戦略と言えるでしょう。

原油価格の上昇や世界情勢の変化は、私たち企業が直接コントロールできるものではありません。しかし、資金体質を強くすることエネルギー効率を高めること生産性を向上させること。こうした取り組みを積み重ねていくことで、どのような環境の変化にも対応できる、強い企業体質をつくっていくことができるのではないかと考えています。

まとめ

世界地図

2026年の現在、世界の経済環境はこれまで以上に大きく変化しています。
原油価格の変動エネルギー価格の上昇、そして物流コストの増加など、さまざまな要因が複雑に絡み合いながら、企業活動に影響を与えています。特に製造業においては、材料費や電力費、輸送費などの多くのコストがこれらの要因と密接に関係しているため、世界の情勢の変化がそのまま経営環境に直結する時代になっていると言えるでしょう。

しかし私は、このような変化の激しい時代だからこそ、経営者の判断や行動が企業の未来を大きく左右するのではないかと考えています。外部環境を完全にコントロールすることはできませんが、その環境にどう向き合い、どのような準備をしていくかは、経営者の意思によって大きく変えることができます。だからこそ、こうした時代はまさに「経営者の腕の見せどころ」なのではないでしょうか。

私自身が特に重要だと考えているのは、次の三つの取り組みです。

・手元資金を確保し、経営の安定性を高めること
・省エネルギー設備への投資を進め、コスト体質を強くすること
・AIやDXを活用し、生産性を高めていくこと

これらの取り組みは、どれも一朝一夕で結果が出るものではありません。しかし、こうした基盤づくりを着実に進めていくことで、企業は環境変化に強い体質へと少しずつ進化していきます。そしてその積み重ねが、結果として企業の競争力を高め、持続的な成長につながっていくのだと思います。

御津電子も、こうした時代の変化を前向きに受け止めながら、挑戦を続けていきたいと考えています。私たちはこれまで、「ものづくりは幸せづくり」という理念を大切にしながら事業に取り組んできました。製品をつくることは単なる仕事ではなく、その先にいるお客様や社会に価値を届けることだと考えています。その思いを大切にしながら、これからも技術力の向上や企業体質の強化に取り組んでいきたいと思います。

そして同じ製造業に携わる経営者の皆さまと共に、この変化の時代を乗り越え、より良い未来をつくっていけたらとても嬉しく思います。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。