2026年最新:製造機業界の展望と対策について


こんにちは。御津電子株式会社の人見です。
今回は「2026年度の製造業、とくに製造機を取り巻く環境がどう変わりそうか」、そして私たち中小製造業がどのように備えていけばよいのかについて、できるだけわかりやすくお話ししたいと思います。専門用語はなるべくかみ砕きながら進めていきますので、経営に関わり始めたばかりの方も安心してお読みいただければ嬉しいです。

2026年度の環境展望

展望まずは、来年度に予想されるマクロ環境の変化を整理してみましょう。2026年度も、私たち製造業を取り巻く外部環境は決して楽観できるものではありません。円安の継続や資源価格の高止まり、人件費の上昇など、経営に直接影響する要因がいくつも重なっています。ひとつひとつ丁寧に見ていきます。

円安:金利差と構造的要因による継続

為替については、依然として円安基調が続く可能性が高いと見られています。最大の理由は日米の金利差です。アメリカが高金利政策を維持する一方で、日本は低金利政策を続けているため、この差が円安方向に働いています。

しかし、背景はそれだけではありません。日本経済そのものの成長力の弱さも大きく影響しています。1990年代以降、生産性の伸び悩みや投資の停滞などにより、日本は「稼ぐ力」を十分に高められていない状況が続いてきました。その結果として、構造的な円安が定着していると考えられます。
言い換えれば、「低金利」と「成長の鈍さ」という二つの要因が重なり、円安を押し下げる力になっているわけです。

円安にはプラスの側面もあります。とくに輸出比率の高い企業にとっては、売上を伸ばしやすい環境とも言えます。一方で、部材やエネルギーを輸入に頼る企業にとってはコスト増加という逆風になります。いわゆる「悪い円安」は、利益を圧迫しかねません。

そのため2026年度は、為替や金利の動きに一喜一憂するのではなく、変動しても耐えられる体質づくりがますます重要になる年だと言えるでしょう。

レアアース供給不安:ハイテク産業への影響

続いて、「レアアース(希土類)」をめぐる供給不安について考えてみたいと思います。レアアースは、電気自動車(EV)や工作機械、半導体製造装置など、私たちの産業を支えるハイテク製品に欠かせない重要資源です。しかし、その供給は特定の国に大きく偏っているのが実情です。

とくに日本は、レアアースの約60%を中国からの輸入に依存しています。需要に対して供給量が常に「ギリギリで均衡している」状態が続いており、少しの政策変更や国際情勢の変化でも供給が不安定になりやすい構造になっています。こうした背景から、レアアースは常に供給リスクを抱えた資源だと言われています。

記憶に新しい出来事としては、2010年の「レアアース・ショック」があります。このとき中国政府が輸出枠を大幅に削減したことで、日本への供給が一時的に滞り、価格が急騰しました。多くの製造業が調達に苦しんだ経験は、いまも業界に強い教訓として残っています。

さらに最近の動きを見ると、2025年以降も中国は安全保障の観点からレアアースの輸出管理を強めており、日本企業のサプライチェーンに影響が及ぶ可能性が指摘されています。とくに半導体やEVモーターに使われる磁石材料など、戦略的に重要な素材が規制対象となることで、日本の半導体メーカー、自動車メーカー、工作機械メーカーの部品調達に深刻な影響が出かねないと懸念されています。

こうした状況を踏まえると、レアアースの安定確保は製造業にとって避けて通れない課題です。短期的な対応だけでなく、代替材料の開発や、中国以外の国からの調達を進める「輸入先の多角化」など、中長期的な視点での取り組みがますます重要になってくるでしょう。

原油:不安定だが供給過剰気味

続いて、原油価格の見通しについて整理してみましょう。
結論から言えば、地政学リスクによる上下動は避けられないものの、現時点では「深刻な供給不足」に陥る可能性は低いという見方が主流です。

今年の世界の石油市場は、むしろ供給が増え気味で、需給がやや緩む方向に向かうとの予測が出ています。米ゴールドマン・サックスのレポートでは、ロシアやイランをめぐるリスクで価格が振れる場面はあるものの、全体としては2026年に日量230万バレル規模の供給過剰が生じる可能性が指摘されています。

そのため、「よほど大きな供給障害が起きるか、主要産油国が大幅減産に踏み切らない限り、原油価格には下押し圧力がかかりやすい」との見方が示されています。

こうした見通しを踏まえ、日本国内では「原油そのものの確保については過度に心配する必要はない」という意見も増えています。ただし、だからといって安心しきれるわけではありません。中東情勢の悪化などが起きれば、短期間で価格が急騰するリスクは常に存在します。

とくに燃料費や物流コストに影響を受けやすい製造業にとっては、急激な価格変動への備えが引き続き重要です。具体的には、価格変動を緩和するヘッジの活用や、コスト上昇を適切に販売価格へ反映させる工夫などが求められます。

総じて言えば、2026年の原油市場は「不安定さは残るものの、供給逼迫が起きる可能性は低い」というのが現実的なシナリオと言えるでしょう。

金属資源:価格上昇と原価高騰

続いて、金属資源の動向について見ていきましょう。
金・銀・銅といった主要金属は、いま製造業にとって見過ごせないテーマになっています。ここ数年、これらの価格はじわじわと、しかし確実に上昇基調をたどってきました。

背景にはいくつかの要因があります。一つは世界的な政治・経済の不安定さです。先行きが読みにくい状況の中で、投資家がドル安リスクへの備えとして金属を「安全資産」として買い増してきたことが価格を押し上げました。加えて、鉱山開発の停滞や需要増によって供給がタイトになっていることも、価格を支える要因になっています。

象徴的な動きとして、ロンドン市場では銀価格が一時的に1980年以来の高値水準に達しました。銅も過去最高値に迫る水準まで上昇しており、「単なる工業材料」というより、投資対象としての存在感が強まっていることがわかります。

この流れは、製造業の現場にとって決して他人事ではありません。金属価格の上昇は、そのまま部品や製品の原価に跳ね返ってきます。たとえば電子部品のめっきに使われる銀、電線やモーター部品に欠かせない銅は、価格が上がればそのままコスト増につながります。

そのため各社は、より安価な代替材料の検討や、材料の使用量を減らす設計変更など、さまざまな工夫を迫られています。とくに銅は「産業のコメ」と呼ばれるほど幅広く使われており、その価格動向は製造業全体の収益に影響を及ぼしかねません。
こうした資源高によるコスト増は、2026年度も引き続き注意すべき重要なリスク要因と言えるでしょう。

人件費:上昇傾向と法改正による負担増

最後に、人件費の動向について整理しておきましょう。
日本国内の人件費はここ数年、緩やかながらも確実に上昇しています。とくに2024年以降は物価高への対応として賃上げの動きが広がり、多くの企業が賃金水準の見直しを迫られています。人材確保の観点からも「賃上げは避けられない」という認識が、経営者の間で共有されつつあります。

こうした賃上げ圧力に加え、法制度の変更も企業の負担を押し上げる要因になっています。代表的なのが労働基準法の改正です。2023年4月からは、中小企業でも「月60時間を超える残業に対して50%以上の割増賃金」を支払う義務が適用されました。これまでは25%増しで済んでいた部分が、大企業と同じ水準まで引き上げられたため、残業代コストが大きく膨らむケースが増えています。この変更に合わせて就業規則や賃金規程を見直した企業も多く、管理面の負担も発生しました。

また、労働者派遣法の改正(2020年施行の同一労働同一賃金ルール)も見逃せません。派遣社員の待遇改善が進んだ一方で、企業側のコスト負担は増加しています。正社員との不合理な待遇格差をなくすという趣旨から、派遣先企業は派遣社員にも正社員に近い待遇を整える必要が出てきました。その結果、派遣を活用する企業ほど人件費負担が重くなりやすい構造になっています。さらに「3年ルール」により、同じ派遣社員を長期間受け入れると直接雇用とみなされる可能性もあり、想定外の雇用コストや労務管理負担が生じるリスクもあります。

このように、人件費をめぐっては賃上げ圧力と法改正対応コストの二つが同時にのしかかる局面が続いています。優秀な人材を確保するために給与水準を上げざるを得ない一方で、生産性向上や業務効率化によって増加分を吸収していく工夫も欠かせません。

中小製造業の経営者にとっては、「人件費は単なるコストではなく将来への投資」と捉えつつ、同時に無駄を省くというバランス感覚がこれまで以上に重要になってくるでしょう。

以上が2026年に予想される主要な外部環境の展望です。円安や資源高、人件費増といった課題が見えていますが、次章ではそれらに対する具体的な対策について考えてみましょう。

環境変化への具体的な対策

これまで見てきたように、2026年度は原材料高・エネルギー高・人件費上昇など、コストを押し上げる要因が重なり、中小製造業にとっては決して楽ではない環境が予想されます。とはいえ、「厳しいから何もできない」と立ち止まってしまっては、状況は悪化する一方です。ここからは、こうした逆風にどう立ち向かうか、企業が取るべき実践的な対策をいくつか整理していきたいと思います。値上げ交渉からDX推進まで、経営の幅広い視点で考えていきましょう。

未来の展望

適正な価格転嫁と先行投資で物価高に備える

まず重要なのが、価格戦略と投資戦略です。原材料費や人件費が上がる局面では、自社の製品・サービス価格にそのコストを適切に反映させる「価格転嫁」が欠かせません。

政府も、「賃上げが物価高に追いつくためには、原材料費・エネルギー費・労務費まで含めたコストをサプライチェーン全体で適正に価格へ反映させる必要がある」と強調しています。つまり、下請け企業であっても遠慮せずに値上げ交渉を行い、正当な対価を受け取ることが健全な経済循環につながります。中小企業庁も全国に価格交渉サポート窓口を設置し、交渉の進め方や資料作成の支援を行っていますので、こうした制度を活用しながら取引先と建設的な対話を進めていただきたいと思います。

加えて、インフレ環境では設備や機械の導入コストが今後さらに上昇する可能性があります。そのため、「必要な投資は先送りせず、前倒しで実行する」という発想も有効です。実際、建設費や人件費の上昇を見越して設備投資を早めに実施する企業が増えているというデータもあります。三菱UFJ信託銀行の調査でも、インフレ下では「将来より今のほうが投資コストや資金調達コストが低い」と考え、投資を前倒ししている企業が少なくないと分析されています。

もちろん、闇雲な投資はリスクがあります。しかし、老朽設備の更新、省エネ設備への切り替え、生産効率を高める自動化投資など、いずれ必要になる施策については早めに着手することで、結果的にコスト削減や競争力強化につながるケースが多いのも事実です。

要するに、価格面では守りを固め、投資面では先手を打つという二つの視点をバランスよく持つことが大切です。「値上げ=悪」という固定観念にとらわれず、正当な値上げは取引先にも理解を求めていきましょう。そして、将来を見据えた投資は計画的に前倒しで進める――この“攻めと守りの両立”こそが、インフレ時代を生き抜く中小製造業の重要な経営姿勢と言えるでしょう。

海外取引の拡大と「アウトイン」案件の活用

次に、海外とのビジネス機会について考えてみましょう。国内市場が人口減少などで伸び悩む中、中小企業であっても視野を海外に広げることは、もはや「選択肢」ではなく「重要な戦略」になりつつあります。

とくに現在の円安基調は、日本製品の価格競争力を高める追い風です。品質の高さで評価される日本の製品や部品は、海外市場で十分に勝負できる可能性があります。この機会を活かし、自社の技術や製品を積極的に海外へ売り込む(輸出の強化)ことをぜひ検討してみてください。ジェトロ(日本貿易振興機構)などの公的機関を活用すれば、販路開拓のノウハウ提供や商談マッチング、展示会出展支援などを受けることができ、初めての海外展開でも取り組みやすくなります。

さらに注目したいのが「アウトイン案件」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは海外企業が日本企業に仕事や発注を持ち込む動きを指します。たとえば、海外メーカーが日本の高精度な加工技術に目をつけ、部品製造を直接委託してくるようなケースです。近年、こうした海外から日本への直接受注(インバウンド案件)は、中堅・中小企業でも増え始めています。これは、自社の強みを活かしてグローバルに収益を得られる大きなチャンスと言えるでしょう。

もちろん、海外取引には為替変動リスクや言語・商習慣の違いといった課題もあります。しかしそれ以上に、国内需要の停滞を補い、新たな成長の柱をつくれるメリットは非常に大きいと考えられます。成功のカギは、信頼できるパートナー探しとリスク管理です。現地の商社や取引先候補の信用調査を行う、為替予約で収益のブレを抑える、契約条件を細かく詰めるなど、慎重な準備を行ったうえで挑戦していきましょう。

また、海外展示会への出展やオンライン商談会への参加は、自社の技術を世界にアピールする絶好の機会になります。国内だけにとどまらず、「内需+外需」の二本柱で売上を伸ばす――そのくらいの意気込みで、積極的に外の市場にも目を向けていただきたいと思います。

省人化(FA・DX)による生産性向上

人手不足と人件費上昇が当たり前になったいま、省人化・自動化への取り組みは「できればやる」ものではなく、「やらざるを得ない」経営課題になっています。FA(Factory Automation)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用して生産現場の生産性を高めることは、もはや大企業だけの話ではなく、中小企業にとっても不可欠なテーマと言えるでしょう。

限られた人数でこれまで以上の成果を出すためには、現場のやり方そのものを見直し、無駄を減らして「省人化」を進めることが重要です。ここでいう省人化とは、単に人を減らすことではなく、仕事の進め方を効率化して、少人数でも同じ(あるいはそれ以上の)生産量や品質を実現できる体制をつくる取り組みを指します。

具体策としては、製造ラインへのロボット導入や組立工程の自動化、省力化設備の活用などが考えられます。たとえば、これまで人手で行っていた目視検査を画像認識AIとロボットに置き換えたり、AGV(自動搬送台車)で工場内の部材運搬を自動化したりと、規模に応じてさまざまな施策が選べます。

DXの観点では、IoTセンサーで設備の稼働データを集めてボトルネックを見える化したり、クラウド型の生産管理システムで進捗を一元管理し、担当者の経験や勘に頼りすぎない運営に切り替えることも有効です。こうした取り組みは初期投資が必要になりますが、長い目で見れば人件費の抑制や品質向上につながり、十分に回収できる可能性が高いと言えます。

何より大切なのは、「人を減らすこと」そのものを目的にしないということです。目指すべきは「少ない人数でも安定して回る仕組みづくり」です。まずは現場のムリ・ムダ・ムラを丁寧に洗い出し、自動化できる部分から少しずつ改善していきましょう。

ありがたいことに、国や自治体には中小企業の生産性向上を後押しする補助金・助成金が数多く用意されています。IT導入補助金やものづくり補助金などを活用すれば、投資負担を抑えながらFA・DXを進めることが可能です。こうした支援策も賢く使いながら、「少人数でも強い現場」をつくっていきましょう。それが結果として、競争力の強化と人件費上昇への最も実践的な対策になります。

社内AI活用の推進(クローズドAIの活用)

次に、AI(人工知能)の活用について考えてみましょう。ChatGPTに代表される生成AIが広く知られるようになり、「自社の業務にどう活かせばよいのか」と悩んでいる経営者や現場責任者の方も多いのではないでしょうか。

ここで重要なのは、単に流行に乗るのではなく、社内で安心して使えるクローズドなAI環境を整えることです。一般公開されている生成AIに機密情報や設計データをそのまま入力するのは、情報漏洩のリスクがあります。そのため近年は、企業専用の閉じた環境で利用できる「クローズドAI」が各社から提供され始めています。マイクロソフトやNECなども、社外にデータを出さずに利用できる企業向けAI環境を展開しており、セキュリティを保ちながらAIを業務に取り入れられる選択肢が増えてきました。

こうした社内クローズドAIを活用すれば、高いセキュリティを確保しつつ、自社の業務データをもとにAIを学習させ、会社独自の知識を活かした支援ツールとして使うことが可能になります。たとえば、過去の設計図面やトラブル対応履歴、技術ノウハウを学習させたAIに質問すれば、まるでベテラン社員に相談するようなヒントが得られる――そんな使い方も現実味を帯びてきています。実際、一部の製造業では社内FAQ対応や設計支援、保全サポートなどに生成AIを活用し始めています。

まずは小規模でもよいので、社内で試験運用を始めてみることをおすすめします。社員がAIに触れ、使い慣れていく中で、「こんな使い方もできそうだ」という新しいアイデアが自然と生まれてくるでしょう。

ただし導入にあたっては、利用ルールの整備と教育が欠かせません。どのデータをAIに学習させてよいのか、どの情報は入力してはいけないのか、といった基準を明確にする必要があります。また、AIの回答は必ずしも100%正しいわけではないため、結果を人が確認・検証する体制も重要です。

上手に活用すれば、AIは人に代わる存在ではなく、「社員の知恵を増幅する頼れるパートナー」になります。2026年に向けて、ぜひ社内クローズドAIの導入に一歩踏み出し、業務のDX化とナレッジ共有を加速させていただきたいと思います。

セキュリティ強化:オンプレミス脱却と脱VPNの潮流

デジタル化が進めば進むほど、情報セキュリティ対策の重要性は増していきます。とくにいま注目されているのが、従来のオンプレミス環境やVPN接続に頼ったネットワーク運用からの転換、いわゆるゼロトラストセキュリティへの移行です。

これまで多くの企業は、自社内にサーバーを設置する「オンプレミス」を中心にシステムを構築し、社外からはVPNで接続する形をとってきました。しかし近年、VPNを狙った不正アクセスや情報漏洩事故が相次ぎ、「VPNさえあれば安全」という考え方は通用しなくなってきています。実際、日本企業の約8割はいまもVPNを利用している一方で、「VPNの使用停止」を検討または実施した企業が約1割に達し、その理由の62.2%がゼロトラスト推進による“脱VPN”でした。これは、「社内だから安全」という前提を捨て、社内外を問わず常に本人確認と端末確認を行うゼロトラスト型へ移行しようという大きな流れを示しています。

中小企業においても、今後はクラウド活用とゼロトラスト的な考え方がますます重要になります。たとえば、メールやファイルサーバーをクラウド化し、社内システムへのアクセスは端末認証や多要素認証で厳格に管理する、といった運用です。これまでのように「VPNで社内に入れれば何でも見られる」仕組みを改め、ユーザーや端末ごとに必要最小限の権限だけを与えることで、万一の侵入時の被害を大きく減らせます。テレワークが当たり前になったいま、場所に依存しないセキュリティ設計は欠かせません。

まずは自社のIT資産の棚卸から始めてみましょう。老朽化したオンプレミスサーバーはないか、誰でも見られる共有フォルダに機密情報が置かれていないか、VPNのアクセス権限が適切に管理されているか――こうした点を一つずつ点検します。そのうえで、信頼できるクラウドサービスやセキュリティツールへの移行計画を立てていくのが現実的です。幸い、いまは中小企業でも導入しやすい価格帯のクラウドが増えています。

「オンプレミスに固執しない」「VPNに頼り切らない」――この二つが、2026年以降のセキュリティ強化の重要なキーワードになります。大切な顧客情報や自社の知的財産を守るためにも、最新のセキュリティ動向を意識しながら、計画的に対策を進めていきましょう。

経営者に求められる視点:円か価値か、そして人と社会

ここまで環境変化と対策を見てきましたが、最後に経営者としてのマインドセットについて触れておきます。激動の時代を乗り切るには、数字だけを追うのではなく広い視野とバランス感覚を持つことが大切です。特に「円(お金)か価値か」と「社員・社会との向き合い方」の2つの視点を意識してみましょう。

「円」と「価値」のバランス感覚

ビジネスを行う以上、売上や利益といった「円」=お金が重要であることは言うまでもありません。ただし、現代の経営ではそれだけでは十分とは言えなくなってきました。企業には、経済的成果に加えて社会的な価値を生み出す存在であることが求められています。
特に若い世代の働き手や顧客は、「どれだけ儲けているか」だけでなく、「社会にどんな良い影響を与えているか」を重視するようになりました。そのため経営者には改めて、「我が社は何のために存在するのか」という問いに向き合う姿勢が求められています。

これまで日本はGDP成長を豊かさの基準としてきましたが、人口減少が進む現在、右肩上がりを前提にするのは難しくなっています。一方で、日本は「モノの量を増やす経済」から脱却し、社会課題を解決しながら豊かさを高める「課題解決先進国」へ向かっているという見方もあります。
もしそうであれば、企業も「売上・利益ファースト」だけでなく、社会課題の解決やソーシャルインパクトを重視した経営へと転換していく必要があります。

カーボンニュートラルやSDGsへの取り組みは、短期的にはコスト増になる場合もあります。しかし長期的にはブランド価値を高め、新しい市場を切り開く可能性があります。社会に貢献する企業には共感が集まりやすく、人材や資金も集まりやすいと言われています。まさに「円も大切、しかし最終目標は価値創造」というバランス感覚が重要です。

「目の前の経営で精一杯」と感じる中小企業経営者も多いでしょう。まずは自社を守ることが最優先です。ただし、そのうえで自社の強みを活かして社会に貢献できることはないかを一度考えてみてください。大きなSDGsでなくても、地元活動や働きやすい職場づくりなど身近なことでも構いません。
目先の円を大切にしつつ、長期的な価値を育てる。この両立こそが、これからの中小企業経営に求められる姿だと感じます。

社員との対話、社会課題への目配り

もう一つ大事なのは、「人」と「社会」への目配りです。まず社員との対話について。会社を動かしているのは何と言っても「人」ですから、経営者が社員一人ひとりと向き合い、コミュニケーションを密にすることが強い組織を作ります。業績の良い中小企業ほど、社長が社員のことをよく知り、社員の話によく耳を傾けているという共通点があるとも言われます。トップが現場の声を知り、ビジョンを直接伝える努力をすることで、社員の心にも火がつきます。

具体的には、経営トップが時間という経営資源を社員との対話に割くことが重要だと指摘されています。実際に変革に成功した企業では、社長が年に30回、多いところでは100回もの社員対話の場を設けた例もあります。しかも単なる演説ではなく、「背景はこうだ、一緒にやってみよう」といった本音や弱みも交えた率直な対話を重ねたそうです。そうした対話が現場の化学反応を生み、社員の主体性に火を付ける起爆剤になったとのことです。中小企業でも、朝礼や懇談会、1on1ミーティングなど形式は何でも構いません。ぜひ双方向のコミュニケーションを増やし、社員とビジョンや課題意識を共有してください。「社長は自分たちの話を聞いてくれている」「一緒に会社を良くしていこうと思ってくれている」と社員が感じれば、組織の結束力は格段に高まります。

さらに、社会課題への目配りも経営者に求められる視点です。先ほど「円より価値」の話でも触れましたが、企業を取り巻く社会の動きにアンテナを張っておくことは、リスク管理の上でも新規事業のヒントという面でも重要です。例えば環境規制の強化は将来のビジネスチャンスにも脅威にもなり得ますし、地域社会のニーズを捉えれば新たな製品サービス開発につながるかもしれません。社会から取り残されないように、自社の存在意義を社会の文脈で考える習慣を持ちましょう。

昨今は「企業の存在目的」を問い直す動きも出てきています。「わが社は何のために存在するのか?」という問いに正面から向き合い、社会やお客様にどんな価値提供ができるかを突き詰めることが、結果的に企業の成長と持続性を高めると考えられます。経営者自身がそうした高い視座を持ち、なおかつ社員ともそれを共有していけば、多少環境が厳しくともブレない軸ができます。社員のエンゲージメント(会社への主体的な関与)も高まり、人も会社も持続的に成長できる好循環が生まれるでしょう。

まとめ

2026年度の製造業を取り巻く環境は、円安の進行や資源価格の変動、人件費の上昇など、中小製造業にとって決して楽なものとは言えません。しかし、だからこそ「どう向き合うか」が企業の未来を左右します。適切な対策を打ち、主体的に動くことで、逆風を追い風に変える可能性は十分にあります。

円安には価格交渉力の強化と海外展開で対応し、資源高には省エネ投資や代替材料の活用で工夫を重ねる。人件費の増加には生産性向上と付加価値の向上で応える――まさに経営者の判断力と実行力が問われる局面です。

何より大切なのは、変化を恐れず前向きに挑戦する姿勢だと感じます。「環境が厳しいから仕方がない」と受け身になるのではなく、「この環境で自社は何ができるか」を考え抜くことこそが、中小企業の強みを発揮する近道です。日本の中小製造業は、優れた技術力と柔軟な発想でこれまでも数々の困難を乗り越えてきました。これからも社員と力を合わせ、社会のニーズに応え続け、「選ばれる会社」でありたいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。私自身も、皆さまの挑戦を心から応援しています。御津電子としても、お客様や社会に貢献できるものづくりに一層力を尽くしてまいります。共に2026年を実りある一年にしていきましょう。

参考文献・情報源(出典):

日本総合研究所『円安が阻む好循環、抜本策は成長力強化』(2024年6月)

資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた鉱物資源政策』(2021年)

経済産業省『重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針』(令和7年6月改定)

赤坂国際会計事務所「商務部公告2025年第61号に関する解説」(2025年10月)

ロイター「26年の原油価格は下落へ、供給増で=ゴールドマン」(2026年1月12日)

フォーブスジャパン「上昇を続ける銅、金、銀価格 その背景にある要因」(2023年)

生産ナビ「銀価格の変動と製造業への影響:調達戦略とコスト管理」(2023年)

マンパワーグループ「2023年法改正|人事関連の3つの改正」(2023年1月)

日研トータルソーシング「派遣法改正が目指すものとは」(2025年9月)

公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(2023年)

三菱UFJ信託銀行『インフレ環境下の企業業績と企業行動』(2022年12月)

東京都中小企業振興公社「工場の課題をDXで解決しよう!―省人化と自動化で現場を変革する」(2022年)

PERSOL総合研究所「《人的資本経営》対話が社員の心に火をつける」(2022年6月10日)

東洋経済オンライン/三菱総研「社会課題解決でなぜ資金が集まり成長するのか?」(2022年12月23日)

ScanNetSecurity「2.9%『VPNやめました』6.8%『VPNやめます』」