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Factory Innovation Week 2025での講演、大盛況でした
先日、インテックス大阪で開催された大規模展示会「Factory Innovation Week 2025」にて、御津電子株式会社代表の人見雄一として「人的資本経営」に関する講演を行いました。おかげさまで用意した250席は瞬く間に満席となり、多くの方にご来場いただきました。講演後には名刺交換のために約1時間も行列ができるほどの大盛況ぶりで、自分でも驚くほどでした。参加者アンケートの満足度スコアも同種のセミナーと比べて約2倍という非常に高い評価を頂き、講演者冥利に尽きます。
講演に参加くださった方々からは、例えば次のようなお声をいただきました。
- 「情熱的で、人的資本経営をやってみる勇気が湧きました」
- 「異動を命じられて悩んでいたが、講演を聞いて受け入れる決意ができました」
- 「経営方針発表会の大切さを理解できた。私もやってみる」
- 「今までやっていたことが正しいとよくわかった。自分を信じてみる」
経営者から現場の従業員の方まで立場は様々でしたが、皆様が真剣に耳を傾けてくださり、私のメッセージが何かしらの気づきや勇気につながったのだと実感し、胸が熱くなりました。
講演で伝えたシンプルなメッセージ
今回の講演で私がお伝えしたかったのは、極めてシンプルながら中小企業の経営で最も重要だと考える3つのポイントです。すなわち「従業員の可能性を信じる」「強みを引き出す」「やりたいことにフォーカスする」というメッセージです。どれも当たり前に聞こえるかもしれませんが、実際に経営の現場で徹底するのは簡単ではありません。しかし私は、この当たり前こそが人的資本経営の本質だと考えています。
御津電子で掲げている人的資本経営の考え方もまさに同じです。まず大前提にあるのは「人の可能性は無限大、『あなたはできる!』という信念」です。私たちは従業員一人ひとりの可能性を信じ、「この人はできる」と最初から信頼して接するようにしています。その上で、各人の強みや本当にやりたいことにフォーカスし、それを引き出すことに全力を注いでいるのです。これは当社の企業ビジョンである「ものづくりを基盤とした多角化経営」とも通じています。従業員が安心して挑戦でき、自分の強みを活かせる環境を整えることが、結果的に企業のビジョン実現につながると考えているからです(※当社の詳しいビジョンはミッション・ビジョン・バリューページでも紹介しています)。
そして、この考えを実践するために講演でもご紹介したのが「KSKサイクル」です。KSKとは「傾聴・支援・改善」の頭文字ですが、要は経営者や上司が従業員の声に耳を傾け(傾聴)、全力でサポートし(支援)、出てきた成果や課題を一緒に振り返ってより良くしていく(改善)――このサイクルを繰り返しましょう、ということです。私は難しい経営理論よりも、まずこうしたシンプルな人への向き合い方を現場で徹底することが、組織を変える第一歩だと強調しました。
リクルート時代に学んだ「人を信じること」の大切さ
なぜ私がこれほど「人の可能性を信じる」ことにこだわるのか――その背景には、私自身の原体験があります。実は私は新卒で大手人材企業のリクルートに入社し、約10年間勤務していました。その中で痛感したのが、人は適切に信じて支えれば大きく成長するという事実です。
入社当初の私は営業として決して優秀な社員ではなく、むしろ成果が出せずに悩んだ時期もありました。しかし幸運なことに、当時の上司が私の可能性を信じ、見捨てずに育ててくださったのです。熱心な指導と「お前ならできる」という励ましのおかげで徐々に成果を上げることができ、契約社員から正社員、そしてマネージャー職にまで成長することができました。この経験を通じて、「やる気×安心して働ける環境×理解ある会社や上司が揃えば、人の潜在能力は本当に無限大に引き出せる」ということを身をもって学びました。リクルート時代に頂いたこの教えは、現在の経営姿勢の原点になっています。
また、リクルートで多くの人材と接し採用・育成に携わった経験から、「結局どんなに優れた戦略も、それを実行するのは“人”である」という真理も学びました。どれほど最新の設備や仕組みを整えても、それを活かすのは従業員一人ひとりです。だからこそ経営者がまず最初にすべきは、人に向き合い**「この人には可能性がある」と信じ抜くこと**なのです。これは今でも私が経営判断に迷った際に立ち返る信念となっています。
KSKサイクルの実践が生んだ業績向上と新事業の創出
実際に人的資本経営の取り組みを通じて、当社は大きな成果を挙げてきました。その代表的な例として講演でも紹介したのが、かつて業績不振に陥っていた当社工場のV字回復ストーリーです。私が御津電子に入社した当時、その工場は従業員の平均年齢が60代と高齢化が進み、新規採用応募も月1名あるかないかという状況でした。そこでまず私が着手したのが、先述のKSKサイクルによる組織改革です。現場の声に徹底的に耳を傾け、一人ひとりの強みや希望を把握し、必要な支援を行い、小さな改善を積み重ねていきました。
この地道な取り組みを続けた結果、60代が中心だった工場に活気が戻り、なんと月1名程度だった応募者数が20名以上に急増しました。社内の雰囲気が変わり「この会社で働きたい」という人が増え、人材採用が劇的に好転したのです。また社内の既存社員も自分の強みを発揮できるようになり、生産性や品質面で大きな改善が見られました。まさに人を信じて投資したことで業績がV字回復した瞬間でした。
さらに人的資本経営の効果は新規事業の創出にも及びました。講演では触れませんでしたが、当社ではここ数年で障がい者福祉事業や美容関連事業といった異業種の新規事業部門の立ち上げにも成功しています。一見製造業とは無関係にも思える分野に進出できたのは、「この社員の強みや情熱を活かせば新しい価値が生み出せるかもしれない」と社員の提案を信じ、背中を押した結果です。実際、人的資本経営を本格的に推進してから約2年で福祉事業部を立ち上げ早期に黒字化を達成するなど、新規事業でも成果を上げることができました。
このように、従業員を信じて強みを活かす経営は短期的な利益以上の大きなリターンをもたらします。既存事業の収益改善はもちろん、社員のアイデアから将来の柱となる新事業が生まれることもあります。人的資本経営は当社の掲げる多角化ビジョンの実現そのものを支えており、社員の成長が会社の成長につながる好循環を作り出しています。
人的資本経営の本質は「人に向き合うこと」から始まる
講演の最後にも強調しましたが、人的資本経営の本質は仕組みや制度の前に「人」に向き合うことにあります。世間では人的資本経営というと人事評価制度の見直しや研修プログラムの導入、情報開示の整備など「仕組みづくり」の話に目が行きがちです。もちろんそれらも大切ですが、その前に経営者が徹底的に人と対話し、可能性を見出す姿勢を持たなければ、本当の変革は起きません。
私自身、社内の人材育成施策よりもまず経営者自らが現場の声を聴くことを心掛けています。たとえば定期的に現場社員との面談の場を持ち、仕事上の悩みや将来やりたいことを傾聴するようにしています。そうした対話を通じて見えてきた一人ひとりの強みやチャレンジしたいことを尊重し、できる限り実現に向けて支援するのです。その積み重ねが社員のエンゲージメントを高め、「この会社のために頑張ろう」「新しいことに挑戦しよう」という前向きな風土につながっています。
繰り返しになりますが、人的資本経営で成果を上げる秘訣は決して難しいことではありません。経営者がまず従業員の可能性を信じ、強みや夢に耳を傾け、支援し、共に成長するための改善を続けること――これに尽きると思います。言い換えれば「どれだけ社員を大切に思い、本気で向き合えるか」が問われているのでしょう。仕組みづくりはその土台があって初めて活きてきます。人ありきの経営姿勢を忘れないことこそ、人的資本経営成功のカギだと改めて感じています。
まとめ:人を信じ、未来を拓く中小企業経営
今回のFactory Innovation Week 2025での講演を通じて、改めて実感したのは多くの中小製造業経営者の方々が「人」に関する経営に強い関心を寄せているということです。満席となった会場、講演後に直接ご相談くださる方々、アンケートでの高評価…どれも人的資本経営というテーマの重要性を物語っていました。
私自身、「人的資本経営が日本全体に広がれば、日本を再び強くできる」と本気で信じています。中小企業こそ人材不足など課題も多いですが、だからこそ人的資本経営によって従業員一人ひとりの力を最大化する余地が大きいのです。日本には長期雇用を重んじる文化があり、昔から「人を育てる」ことに長けた企業風土もあります。それはまさに人的資本経営の土台となる強みです。経営者が人に向き合い、社員の幸せと成長を願って経営判断をする会社が増えれば、きっと業界全体が底上げされ、日本の製造業の未来も明るくなるでしょう。
最後に、中小製造業の経営者の皆様にお伝えしたいのは、「まずは目の前の従業員を信じ、対話することから始めてみませんか」ということです。難しい仕組みより先にできることはたくさんあります。社員の声に耳を傾け、強みにスポットライトを当て、挑戦を励ましましょう。私も**「ものづくりは幸せづくり」**という理念のもと(弊社の理念についてはこちらにも掲載しています)、これからも社員とその可能性を信じ抜く経営を続けていきます。
幸いにも今回の講演は大変高い評価を頂き、「人的資本経営をぜひ自社でも実践したい」という声を多数伺いました。人にフォーカスした経営の輪がさらに広がっていくことを、心から楽しみにしています。もし本記事をお読みの方で人的資本経営についてもっと詳しく知りたい、話を聞いてみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。講演のご依頼やご相談も大歓迎です(詳細は当社サイトのお問い合わせページからどうぞ)。共に**「人を信じ、未来を拓く経営」**について学び合い、日本の製造業を盛り上げていければ幸いです。
出典:
- 人的資本経営の事例、Factory Innovation Week 2025で登壇してきました(岡山障害者就労支援株式会社 Lumo岡山東区店ブログ)、https://lumo-okayama.jp/2189/
- 「人的資本が工場を変える」Factory Innovation Week 2025で登壇決定!(PR TIMESプレスリリース)、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000160337.html
- 人的資本経営について(御津電子株式会社)、https://mitsudenshi.co.jp/company/human_capital_management/

中小製造業の経営者でしか知りえないリアルな情報を発信
【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
【講演実績】
おかやまテクノロジー展(OTEX)2022 『仲間と共に歩むV字回復ストーリー』
日本金型工業会 『WEBマーケティングの力で新規開拓 ~顧客開拓に成功した事例~』
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