連日ニュースで報道される過度な円安。現在は144円台前半ですが、昨年10月には150円を超える時期もありました。2023年の始めにはいったん120円前後まで落ち着きましたが、最近はまた徐々に上昇しつつあります。過度な円安は、海外に輸出している会社には輸出競争力が上昇し非常にプラスになります。
しかし、円安は海外からの原材料の価格が上昇してしまうため、痛手を負う事業者も多いのが事実です。
この記事では、中小製造業から見た円安のメリット・デメリットを解説します。
また、メリット・デメリットを踏まえたうえで中小製造業者が取るべき対策も解説していきます。
最後まで読んでいただき、参考にしてください。
目次
そもそも円安とは?
引用元:大和証券
円安とは、円の価値が下がることです。例えばですが、「1ドル=100円」から「1ドル=120円」になった場合が円安です。
100円から120円に増えたので円高と間違える方が多いのですが、1ドルあたりに必要な円が100円から120円になっており円の価値は相対的に下がっています。
昨今の円安は、いつもの円安とは違うと言われています。いつもと違うと言われている3つの理由を解説した記事もありますので、あわせてお読みください。
>>>【2023年最新】 昨今の円安がいつもと違う3つの理由を解説!!円安が与える日本の製造業への影響。
中小製造業における円安のメリット
円安による中小製造業のメリットはどんなものがあるのでしょうか。
この記事では、以下の3つのことを詳しく説明します。
- 輸出競争力の向上
- 海外進出の促進
- 観光産業との連携
中小製造業者が円安のメリットをしっかり理解しておくと、事業を飛躍させられる可能性があるので、じっくりお読みください。
輸出競争力の向上
円安には、製造業の輸出競争力を高める効果があります。
輸出競争力とは、ある国や企業が他の国や企業と比べて、自国の製品やサービスを外国市場で競争力のある価格や品質で提供できる能力のことです。
円安になれば、日本の商品が海外で安く買えるようになります。
例えば、1つ100円のチョコレートがあったとします。1ドル100円のときは、1ドルで購入できます。1ドル200円になれば、0.5ドルでチョコが買えるようになります。
このように円安になれば、海外の人は日本の製品がより安く購入できるようになります。
日本の商品は品質がとてもいいので、価格が安くなった分、輸出をしている日本製品は他の国の製品と比べて、優位に立てるでしょう。
海外進出の促進
円安は、日本企業にとって海外での生産活動を促進する要因になります。円安により海外での生産コストが低下するため、海外で施設の設立や拡大がしやすくなります。
輸出競争力も同時に上がるので、海外需要への対応がしっかりできれば、事業が一気に拡大する可能性もあるでしょう。
しかし、海外生産には言語や文化の違い、政治的なリスク、為替リスクなども存在します。安易に海外進出を決めてしまうと失敗し、倒産まで追い込まれるかもしれません。
海外進出を行う場合は、慎重な計画を立てることをおすすめします。
観光産業との連携
円安は、日本への外国人観光客の増加を促すきっかけになります。外国人観光客は、円安によって日本への旅行や日本での買い物を外国と比べてお得に楽しむことができます。
外国人観光客の増加は、ホテル、飲食店、小売業などの観光関連産業の需要を拡大させるでしょう。
中小製造業者は、この観光産業と上手く連携することができれば、円安による外国人観光客の増加の恩恵を享受することができます。
中小製造業における円安のデメリット
ここまで円安による中小製造業のメリットを解説してきましたが、もちろんデメリットも存在します。デメリットを理解しているかどうかで適切な対応ができるか決まるので、しっかり読んでください。
中小製造業における円安のデメリットは以下の3つです。
- 輸入原材料価格の上昇
- 電気代の高騰
- 海外市場の不確実性
1つずつ丁寧に解説していきます。
輸入原材料価格の上昇
1つ目は、輸入原材料価格の上昇です。中小製造業は原材料を海外から輸入することが多いため、円安による輸入原材料価格の上昇の影響を大きく受けます。
輸入原材料価格の上昇により生産コストが増加し、利益率が低くなったり、製品価格を引き上げたりしなければならなくなります。
また、企業の資金繰りにも影響を及ぼす場合があるでしょう。原材料価格が上昇すれば、企業が必要とする資金が増えるため、資金調達の難化や経営の安定性への影響が生じる可能性があります。
電気代の高騰
2つ目は、電気代の高騰です。
日本はエネルギー資源を海外から多く輸入しているため、円安が進むとエネルギー資源の価格が上昇します。エネルギー資源の価格の上昇は、電気代の値上がりの要因の一端となる可能性があります。
多くの中小製造業者は、工場を管理していますが、電気代が高騰してしまうと日々の支払いが多くなり苦しむことになるかもしれません。
海外市場の不確実性
円安によって、「海外への輸出競争力が上がること」と「海外進出のチャンス」がメリットになるとお伝えしましたが、同時に海外市場の不確実性も高まります。
海外市場は国際的な貿易摩擦や政治的リスクの影響によって、急激に変動することがあります。海外市場の不確実性が増すので、海外の市場をメインにしてしまうと会社経営が不安定になってしまいます。
中小製造業は、海外市場の不確実性を理解し、それに対応するための柔軟性と適応力を持つことが重要です。
円安に向けて中小製造業ができる3つの対策
過度な円安を私たちの手で止めることはできません。メリットがありうれしい反面、デメリットとも向き合う必要があります。
円安のときにできる対策は3つです。
- ホームページを英文化
- 省電力設備に投資
- 材料を多めに仕入れる
1つずつ丁寧に解説していきます。
① 海外からの注文に対応できるよう、ホームページの英文化
メリットの部分で説明しましたが、円安により海外への輸出競争力が上昇します。自社製品が海外の方の目に留まれば、海外から発注してくれるかもしれません。
海外から発注するのに、ホームページが英語に対応していないと外国の方は何が書いてあるかわかりません。
Google翻訳があるから大丈夫なんじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、英語で検索したら英語のページしか出てきません。
つまり、英語のホームページを用意しないとそもそも海外市場の土俵に立てないということです。今では、クラウドソーシングサイトも充実しているので、自分で作れない方は外注してみるのも良いでしょう。
② 電気代高騰が予測されるため、省電力設備への投資
円安のデメリットとして、電気代の高騰をあげました。電気代高騰の影響を少しでも抑えるために、省電力設備への投資をしておきましょう。
設備投資にお金はかかるかもしれませんが、長い目で見たときに省電力設備に投資している方が得になる可能性が高いです。
円安は今しのげばいいだけではありません。将来にも必ず円安はやってきます。円安のたびに高い電気代を払うのが正しいのでしょうか。
円安のたびに高い電気代を払うぐらいならこの機会に省電力設備に投資しましょう。
③ 材料の仕入れ
円安のデメリットとして、輸入原材料価格の上昇をあげました。原材料を海外から輸入していない業者はあまり関係ありませんが、原材料を海外から輸入している業者は、普段よりも材料を多めに仕入れましょう。
原材料を多めに仕入れることで、輸入原材料価格の上昇による利益の圧縮や販売価格の上昇を一時的に防ぐことができます。
しかし、仕入れを大量にしすぎるのもよくありません。大量の在庫は、保管場所を取り、災害などで一気に失ってしまう可能性があるからです。
いつもより少し多めの量がちょうどいいと思われます。自社に合わせて良い塩梅の量を仕入れてください。
最後に
どんなことにもメリットとデメリットがあります。円安におけるメリットは最大限に生かしつつ、デメリットの影響を受けないように対策していくのが経営者の役割です。
中小製造業者にとって、円安は切り離すことのできない現象であり、今後何度も円安に悩まされるでしょう。
しかし、この記事で解説しているようなメリットとデメリットを抑えておけば、事前の対応策も準備できると思いますので、この記事をしっかり読み込んでおくのがいいと思います。
先行き不透明なこの時代は一見危険なように思いますが、この時代をチャンスと捉えてチャレンジしていく姿勢こそ、未来を切り開くのではないでしょうか。私はそう信じています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
【講演実績】
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