2023年になり日本でも新型コロナウイルスが5類に分類されました。世界から少し遅れたかたちでコロナ禍からの回復の兆しがみえます。コロナ禍で特に影響を受けたのが半導体です。
世界中で半導体不足が起き、日本国内でも半導体部品が盗難にあうなど、未曾有の半導体不足に陥りました。ビジネス、私生活共に半導体不足の影響を実感している人は多いのではないでしょうか。
「外出自粛に合わせて大型テレビを買いたいが、在庫がなくなっている」
「リモートワーク用にパソコンが欲しいが値上がりしている」
「どうやら世界で半導体が不足している影響らしい」
上記のように、❝半導体❞という言葉は知らなくても、私たちの身近にある半導体に関わる商品の変化で、「何か部品が足りないらしい」と感じているはずです。
実は2024年にこの半導体不足が解消する可能性がある、というのはご存知でしょうか。多くの人に影響がある話ですが、あまり知られていないためこの記事で説明します。
この記事では、以下の内容について詳しく解説します。
☑ 半導体不足がなぜ起こったのか、なぜ今解消するのか ☑ 半導体不足の解消が製造業に与える影響とその対策 |
特に製造業界で働く人は、絶対に知っておくべき内容のため、ぜひ最後までご確認ください。
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目次
長年続く半導体の供給不足は2024年に解消する可能性がある
2020年頃から続いている世界の半導体不足は2024年に解消する、と言われています。
現在起こっている半導体不足の原因は以下の通りです。
☑ 米中経済摩擦により、中国製の半導体利用が減少した。
☑ コロナ禍の巣篭もりやリモートワークにより、半導体を利用した製品の需要が増加した。 ☑ ロックダウンなどの影響で工場が閉鎖し、半導体の供給は減少した。 ☑ ウクライナ危機によって、ロシアやウクライナから半導体に利用する部品の調達が困難になった。 |
このように長年続く問題が複雑に絡みあい発生していたため、半導体の共有不足は長期化しています。
一方で2024年には、以下理由によって半導体不足は回復すると予想されています。
☑ 半導体利用製品(テレビやパソコンなど)のコロナ特需が落ち着く
☑ 各国企業が半導体の製造工場を増設し、稼働が開始した |
要するに、需要が減少し、供給が増加するため、供給不足の状況が解消されます。
一点注意が必要な点として、あくまでも解消する「見込み」であり、確証はありません。半導体不足の解消は2023年にも予想がされていましたが、2024年にずれています。なぜ今回もずれる可能性があるのか、簡単に2つの可能性を解説します。
【半導体不足解消がしない可能性①】根本原因が解決していない
半導体不足の根本原因である、米中経済摩擦やウクライナ危機は解決していません。
加えて昨今の世界情勢では、新たに問題が発生する可能性があります。不測の自体が起こった際には半導体の部品供給や製造に影響がでるため、半導体不足が解決しない事態となります。
【半導体不足解消がしない可能性②】需要が急増する可能性がある
半導体の需要は落ち着きをみせています。しかし、コロナ特需のような事象で予期せず半導体の需要が急増する可能性があります。
あらゆる電子部品の中でも、半導体は特に多くの電子機器に使われています。新しい技術の台頭や、トレンドによっては、需要に大きな影響を与えると予想されます。
【半導体の2024年問題】「問題」と言われる理由と製造業に与える影響
物流の2024年問題がNHKニュースで取り上げられました。
【参考記事】NHKニュース:物流「2024年問題」 自民調査会が提言案とりまとめる
日本で2024年問題といえば、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制で引き起こされる可能性のある問題の数々のことを指します。長時間労働になりやすい物流・運送・建設業などが対応に時間がかかると予想されます。2024年問題だけでなく、製造業に影響を与えるのが半導体の動きです。半導体の供給量により半導体を製造する企業・半導体を使用する企業の両方に問題・影響がでると考えられています。半導体の動きが2024年に今までと違う動きになると予想されており、「半導体の2024年問題」とも呼ばれています。
半導体の供給不足の解消が「問題」とされる理由は、供給不足解消を大きく超えて、過剰供給に至る可能性も秘めているためです。
消費者の目線でみれば、物が溢れる状況は短期的には問題ありません。一方で生産者目線では、物が溢れると大きな影響があります。
半導体の2024年問題は、生産者目線での問題を指した言葉です。具体的にどのような影響があるのかは以下の通りです。
1:半導体を製造する会社に与える影響
半導体が過剰供給になった場合、半導体を製造する会社に与える影響は、以下の2点が考えられます。
■半導体不足解消による熾烈な価格競争
半導体を製造する会社は過剰供給になることで、熾烈な価格競争に巻き込まれると予想できます。
供給不足の状況では、強気の高価格設定ができました。半導体は電子機器全般に使われる重要な部品のため、多少高くても購入されるためです。作れば高く売れる、という生産者目線では非常に優秀な商品です。
しかし、2023年の主要な半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)の2023年6月時点での発表は、2023年の半導体市場が前年比10.3%減の5150億ドル(約71兆円)となるであろうと見通しました。この10.3%減という数字は2022年11月時点で4.1%減と見込まれていた数字よりも6%以上もさがっています。
需要が減ると価格競争が激化することが考えられます。
【参考記事】日本経済新聞:23年の世界半導体市場、10%減に下方修正 スマホ低迷
■先の見えない世界情勢による設備投資の難しさ
商売と社会的意義どちらの観点からも、設備投資を行なった企業も多いです。設備投資の投資回収は強気の高価格を前提とした計画になっています
過剰供給からの価格競争になった場合、これまでの投資を回収できず、経営が苦しくなる企業が続出する可能性があります。
2:半導体を使用する会社に与える影響
半導体を使用する、あるいは半導体を使用した製品を使用する企業にとっては、短期的に見れば過剰供給は良い状況です。
これまで半導体の供給不足で止まった装置販売や設備投資を進めることができます。コロナ禍の影響で生産現場のDX化が急務な状態にも関わらず、半導体不足による装置の長納期化、高価格化で進められない会社が多くありました。
2024年以降は一転して半導体を使った装置の製造を、低価格で進めることができます。(需要との相関で、装置の納期は長納期のままとなる可能性もあります。)
一点注意すべき点としては、低価格競争になり、半導体製造を中止する企業が出た場合、再び供給不足となる可能性もあります。短期的に見れば嬉しい状況も、長期的に見ると不安なことも多い、という点は意識すべきです。
半導体の2024年問題に向けて製造業ができること
製造業の企業は2023年現在からできることを、地に足をつけて行っていくことが大切です。
半導体と2024年問題が起こった場合、どのような立場の会社にも大きな影響があります。どの立場も共通して言えることは、「堅実な計画のもと投資を進める」という基本的なことです。
半導体の供給不足は、半導体バブルとも呼ばれていました。世界情勢も重なり、正常な判断が難しい状況でもありました。製造業の皆様には下記の内容をご覧いただき、今後の方針の参考にしていただければ幸いです。
1:半導体を製造する会社ができること
半導体バブル崩壊を意識した経営が大切です。
これまで半導体を生産する企業は、作れば売れる、という状態でした。これからは作るだけでは売れない状態になります。
半導体に関わらず、プロダクトライフサイクルで成熟期に入る商品はもれなくこの課題にぶつかります。
プロダクトライフサイクルを簡単に解説すると、商品には「導入期→成長期→成熟期→衰退期」があり、それぞれ取るべき戦略が異なる、という考え方です。
成長期では市場が大きく成長するため、商品を多く製造することが、市場のパイをとる上で重要でした。成熟期では、限られたパイをライバルと取り合う必要があります。よって売るための努力が非常に重要になります。
これまでが長い成長期だったのは世界情勢など偶然の結果です。健全な成長をするためにも、売るための努力を進めていく必要があります。
2:半導体を使用する会社ができること
一方で半導体を使う側は、2023年現在から設備投資を進めていく必要があります。
理由は以下の2つです。
☑ 2024年からは装置製造の特需が始まり、装置の長納期となる可能性がある ☑ 2024年の過剰供給は起こらない可能性がある |
多くの人が、「安くなってから買おう」と考えますが間違っています。早く投資をすることで、早くから利益を得られます。
短期的に見れば、機械代で損をする可能性があります。しかし長期的に見れば、今から行動し、少しでも早く設備投資をすることが、結果として売上や利益の最大化につながります。
コロナ禍でDX化の重要性を痛いほど理解した人が多いのではないでしょうか。制御機器や検査装置など、これまで手に入りづらかった商品が徐々に手に入りやすくなります。
今から動いた企業が最大の儲けを得やすいと考えられます。
まとめ
半導体の2024年問題は不確実な予想です。全面的に信用する必要がありませんが、実際に起こってからでは身動きがとれなくなります。
2023年現在からでもできることはあります。
製造業に関わる方々には、2024年をただ待つのではなく、ぜひ今の時点からできる行動を始めていただき、共に乗り越えていきたいと願います。
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【主な経歴】リクルート出身。数々の個人賞を受賞し、GMを歴任
【御津電子での実績】苦しい工場経営を1年でV字回復。技術力と人材育成を通じて、日本を代表する企業を目指している
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